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特集

ThinkStation P320 Tiny完全検証

CADソフトウェアのリーディングベンダー、オートデスク。そのユーザー会である「Autodesk User Group International(AUGI)」では、ワークステーションやストレージ、さらにはキーボード、マウスに至るまで、オートデスク製品に対応したハードウェアの実力値を測り、ユーザーによる製品選択の参考データとして供出する「ハードウェアプロジェクト」を推進している。

同プロジェクトではこのほど、インテル® Core™ i7-6700Tプロセッサーを採用したレノボの世界最小ワークステーション「ThinkStation P320 Tiny」(以下、P320 Tiny)と、A社の小型ワークステーションの比較検証を実施した。結果として明らかになったのは、大量のデータを扱うBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)の用途でも、P320 Tinyが十分実用に耐えうる性能を発揮するという事実だ。

検証方法

オートデスクの土木建築コレクションに含まれる主要なアプリケーションを用い、レノボ「ThinkStation P320 Tiny」とA社の小型ワークステーションの3D処理性能を比較検証。

P320 Tinyの検証結果

  • A社の小型ワークステーションに比べ、本体サイズが圧倒的に小さいにもかかわらず、性能は同等。
  • 大量のデータを扱うBIM/CIMの用途でも十分実用に耐えうる性能を発揮。
  • 最大6台のモニタが接続できるため、複数画面で作業を進めることの多いCAD業務に適している。
  • GPUは最新Pascal世代の強力なNVIDIA Quadro P600を採用。
  • メモリ最大32GB、ストレージも高速なM.2 PCIe NVMe SSDを二基搭載可能(最大計2TB)など、拡張性も確保されている。
  • 重量はACアダプタ込みで2kg以下。CADでよく使われる15インチのノート型ワークステーションよりも可搬性に優れ、デスク上での作業スペースも十分に確保できる。

手の平サイズで驚きの性能

「これほど小さくて軽いP320 Tinyが、どれほどの性能を発揮するかは非常に興味深い点でした」
オートデスク・ユーザーグループ
事務局長兼ハードウェアプロジェクトマネージャー
榊 友幸 氏

「正直、手の平サイズのワークステーションで、大量のデータを扱うBIM(Building Information Modeling)/ CIM(Construction Information Modeling)系のアプリケーションがストレスなく動作させられるとは考えていませんでした。ですが、検証の結果、その予想がいい意味で覆されたのです」──。

こう語るのは、CADソフトウェアのリーディングベンダー、オートデスクのユーザー会「Autodesk User Group International(AUGI)」の日本の事務局長であり、ハードウェアプロジェクトのマネージャーも兼務する榊 友幸氏だ。

同氏が言う「手の平サイズのワークステーション」とは、インテル® Core™ i7-6700Tプロセッサーを採用したレノボの世界最小ワークステーション「ThinkStation P320 Tiny」(以下、P320 Tiny)である。
AUGIのハードウェアプロジェクトでは、オートデスク製品のユーザーにとって有用と思われるハードウェアの検証を定期的に行い、結果を公表するという取り組みを行っている。
今回、ハードウェアプロジェクトのマネージャーである榊氏は、世界最小ワークステーションで、オートデスクの認定ハードウェアでもあるP320 Tinyに注目、同製品の性能や使い勝手を、A社の小型ワークステーションと比較しながら検証した。比較対象2製品の基本スペックは図1に示すとおりだ。

図1:比較検証した2製品の基本スペック

P320 Tiny

A社ワークステーション

CPU

インテル® Core™ i7-6700T

インテル® Xeon® CPU E3-1225 v5

CPU動作クロック

2.8GHz

3.3GHz

CPU L2キャッシュ

1024KB

1024KB

RAM

16GB

16GB

GPUボード

NVIDIA Quadro P600

NVIDIA Quadro M620

GPU VRAM

2GB-GDDR5 64GB/s

2GB-GDDR5 80GB/s

OS

Windows 7 Pro x64 SP1

Windows 7 Pro x64 SP1

ご覧のとおり、単純なスペックの比較では、A社の小型ワークステーションのほうが若干P320 Tinyを上回っている。
「ただし、P320 Tinyは、本体サイズ(最大構成で幅34.5mm ×奥行182mm × 高さ179mm) が、A社の小型ワークステーションよりも圧倒的に小さく(容積比で2分の1以下)、しかも本体重量は約1.3kgときわめて軽量で、ACアダプタを含めても2kgを切ります。ですから、CADでよく使われる15インチのノート型ワークステーションよりも可搬性に優れると言え、机の上の作業スペースもより広く確保することができます。そんなP320 Tinyがどれほどの性能を発揮してくれるかは、非常に興味深いポイントでした。」 その検証の結果、冒頭の榊氏の言葉が示すとおり、P320 Tinyは予想を大きく超える性能を発揮したのである。早速、その検証結果を見ていくことにしたい。

BIM/CIM実務での有用性を実証

今回、比較2製品に対する評価をAutoCAD2018はベンチマークテストにて行い、オードデスクの建設・土木業界向けコレクションに含まれるREVIT2018,NAVISWORKS,INFRAWORKS製品は実際の操作感で行った。

  • AutoCAD(3Dモデル):定番の3D CADアプリケーション

  • REVIT(エントリーモデル):ビルディング インフォメーション モデリング用ソフトウェア

  • NAVISWORKS:多様なデータを単一の3Dプロジェクトデータとして共有/レビューすることを可能にするソフトウェア

  • INFRAWORKS 360:都市計画・衛星写真・GIS情報・3Dモデルを統合したBIM/CIMプラットフォーム

AutoCAD 2018を用いたベンチマーク結果は下記・図2に示すとおりだ。この図では、ベンチマーク結果から、「2D Wireframe」「Realistic」「Conceptual」「X-Ray」など、CADの実務において比較的よく利用される項目のFPS(Frame Per Second:フレーム/秒)値を抜粋し、P320 TinyとA社小型ワークステーションの性能を対比させている。

見てのとおり、比較2製品の性能はデータ量、AutoCADの表示モードに関係なくほぼ同じ値だった。言い方を変えれば、超小型のP320 Tinyは、A社の小型ワークステーションと同等の性能を発揮したというわけだ。
「また、ここで注目すべきは処理するデータ量が増えても、P320 TinyのFPS値に大きな低下が見られていない点です。なかでも、CADユーザーが頻繁に使う2D WireframeのFPS値については、最も大きなサイズのデータを使ったテストで、A社の小型ワークステーションを上回る性能を出せています」と、榊氏は語気を強める。

さらに榊氏によれば、FPSの性能値を見るときに大切なのは、値が30FPSを超えているかどうかであるという。というのも、通常のTV映像は30FPSであり、フレーム処理のスピードがそれを超えていえれば、人の目から見て、実世界のモノの動きと変わらないグラフィックスが再現できるからである。

「CADユーザーにとって重要なのは、実務でストレスなくアプリケーションが使えるかどうかです。ですから、FPS値が30、ないしは40を超えていれば十分で、それ以上の性能が出ていても実のところあまり意味はありません。その視点で、今回の検証結果を見ると、最もサイズの大きなデータを使ったテストにおいても、P320 Tinyはほぼすべての項目で40FPS以上の性能を発揮していました。また、NAVISWORKSやINFRAWORKS 360といったオートデスクのBIM/CIM系アプリケーションの操作で実務に近いデータセットをテストしたところ、ストレスなく設計をすることができました。これほど小さなワークステーションで、NAVISWORKSやINFRAWORKS 360が実用に耐えうるレベルで動くとは考えていなかったので、本当に驚きました」(榊氏)。

図2:比較対象2製品の処理性能比較(AutoCAD 2018)──FPS(Frame Per Second:フレーム毎秒)の平均値比較
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    AutoCAD2018での性能比較①
    使用データ/サイズ:Data1_3D_Solid_logo.dwg/965KB(単位:FPS)

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    AutoCAD2018での性能比較②
    使用データ/サイズ:Data2_3D_Solid_logo2.dwg/5,410KB(単位:FPS)

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    AutoCAD2018での性能比較③
    使用データ/サイズ:Data3_NV_Single_BLD.dwg/9,787KB(単位:FPS)

  • 図3:3D処理性能の検証で利用したAutoCAD2018の画面イメージ
  • 図4:P320 Tinyでは、「INFRAWORKS 360」などのヘビーなBIM/CIM系アプリケーションもストレスなく使える

    ©DigitalGlobe / ©日本スペースイメージング

■検証用サンプルデータの提供元:日本スペースイメージング株式会社
日本スペースイメージングは、地球観測衛星を用いた撮影サービスを提供し、画像作成・付加価値処理(衛星画像製品)、情報抽出・配信(地理空間情報サービス)などを手掛けている。 URL http://www.spaceimaging.co.jp/
住所 〒104-0031 東京都中央区京橋二丁目2番1号 京橋エドグラン 20階

優れた拡張性と堅牢性を確認

「P320は、この小ささで拡張性も十分に確保されています」(榊氏)

今回、榊氏がチェックしたのは、P320 Tinyの処理性能だけではない。拡張性など、実務での使い勝手についても検証した。

その拡張性で、榊氏が評価した一つは、最大6台のディスプレイが接続できることだ。強力なGPUのパワーを誇るNVIDIA Quadro P600ボードには、「Mini DisplayPort」コネクタが4系統搭載されており、これと本体のオンボード「DisplayPort(2ポート)」と組み合わせることで、最大6台のディスプレイに4K品質のグラフィックスが出力できるのである。

「CADの実務では、マルチディスプレイの環境で作業することが多いので、この拡張性はユーザーにとってありがたいものです」(榊氏)。
ストレージも高速なM.2 PCIe NVMe SSDを二基搭載可能(最大計2TB)など拡張性も確保されている。また、背面にある1本のローレットネジを外してメンテナンスカバーを開ければ、SSD(M.2 NVMe SSD)やメモリの増設/交換も簡単に行うことができる。

一方、P320 Tinyは、米国軍調達基準「MIL-STD-810G」のテストにパスする堅牢性も特徴の一つとしている。
「実際、今回の検証でも、システム的なトラブルは一切起こしませんでしたし、少々乱暴に扱っても支障がないことも確認できました。CADやBIM/CIMの現場は、IT製品にとって必ずしも良好な環境とは言えない場合が珍しくありません。ですから、ワークステーションには頑丈さが求められますが、P320 Tinyはその要件も満たしているようです。その他、実務の支障になるレベルの問題も見当たらず、良く練られた完成度の高いマシンと判断しました。」(榊氏)。

BIM/CIMの現場のワークスタイルが変わる

榊氏の本業は、BIM/CIMのコンサルティングであり、会社でもBIM/CIMのアプリケーションプラットフォームを日常的に利用している。その観点と、今回の検証結果を踏まえながら、榊氏はP320 Tinyにさまざまな可能性を感じている。

「例えば、BIM/CIM系のアプリケーションは、3Dモデルを使って関係者間の合意形成を円滑にするためのものです。そのため、外出先や社内の会議室で使わなければならないケースが多いのですが、BIM/CIM系のアプリケーションを動作させるには相応の性能を持ったワークステーションが必要で、そうしたワークステーションは可搬性に難があるのが通常です。ところがP320 Tinyなら、外出先や会議室へ楽に持ち運べますし、その場にあるモニタに画面を出力させればことが済みます。P320 Tinyによって、BIM/CIMの現場のワークスタイル変革が実現されるかもしれません」(榊氏)。

なお、AUGIのハードウェアプロジェクトでは、今回の検証を通じて、P320 Tinyの「AutoCAD」用推奨モデルと「BIM/CIMエントリー」用推奨モデルを選定している。それは下記・図5のとおりだ。

図5:P320 Tinyの推奨モデル

AutoCAD用途向け

BIM/CIMエントリー向け

CPU※

インテル® Core™ i5-7400~7600

インテル® Core™ i7-7700

RAM

8GB

16GB

GPU

Quadro P600

Quadro P600

ストレージ

128GB・SSD/M.2-128GB

M.2-256GB~512GB

※Windows 7を使う場合はインテル® Core™ i5-6500

言うまでもなく、この推奨モデルは、あくまでも推奨で、ユーザーにはコストとの兼ね合いを見計らいながら、自身のニーズにフィットした構成を選んでいただければいいと考えます。今回の検証で、P320 Tinyならば、オートデスクのユーザーも安心して使えるとの確かな手応えを得ました。ご興味を持たれた方は、導入を検討されてはいかがでしょうか。

オートデスク・ユーザーグループ 事務局長兼ハードウェアプロジェクトマネージャー
榊 友幸 氏

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