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【セミナーレポート Vol.2】GIGAスクール構想実現のリーダー群像とは?

【セミナーレポート Vol.2】GIGAスクール構想実現のリーダー群像とは?
― GIGAスクール構想の新たなフェーズを迎えてリーダーはどう動いたか? ―

多くの学校で短縮された夏休みを経て、2学期が始まった。安心・安全な居場所としての学校の役割を懸命に果たしながらも、学校現場はGIGAスクール構想の実現に向けて環境整備とその活用に向かって動き出した。使命感溢れるリーダーたちは、コロナ禍におけるオンラインの経験を活かしてそれぞれが新しい時代の学びの姿を描き出していった。

レノボオンラインセミナーの第二クールに登壇したのは、尾島正敏(倉敷市教育委員会情報学習センター館長)氏、平田勇治(東京都町田市立藤の台小学校副校長)氏、小池翔太(千葉大学附属小学校教諭)氏の3名である。

10月、11月、12月の3回にわたって、3名からはそれぞれが置かれた立場でのリーダーシップ発揮の在り方をめぐって大変興味深い話を伺うことができた。

  • 倉敷市教育委員会情報学習センター館長
    尾島 正敏氏

  • 町田市立藤の台小学校副校長
    平田 勇治氏

  • 千葉大学教育学部附属小学校教諭
    小池 翔太氏

それぞれのリーダーシップ

レノボオンラインセミナーの第二クールに登壇したのは、尾島正敏(倉敷市教育委員会情報学習センター館長)氏、平田勇治(東京都町田市立藤の台小学校副校長)氏、小池翔太(千葉大学附属小学校教諭)氏の3名である。10月、11月、12月の3回にわたって、3名からはそれぞれが置かれた立場でのリーダーシップ発揮の在り方をめぐって大変興味深い話を伺うことができた。

全体最適化

倉敷市内の小・中学校と市立高校のコンピュータ整備と維持管理を一手に担う尾島先生からは、約50,000台のコンピュータを学習インフラとして活用できるようにする配慮(計画)とその具体をお話しいただいた。

ネットワーク・端末・充電保管庫の整備をすべてリンクさせながら進める必要がある。

ICTのインフラ化において一番の課題は、インターネット回線のスピードの確保であり、そのために学校現場へ出向き、負荷テストを繰り返されている。既存環境と経費等を総合的に勘案した時、倉敷市としての全体の最適解を見出そうとする真摯なリーダーシップが伝わってきた。

加えて学校現場の意識を変えるためには、まずはGIGAスクール構想の正しい理解が大前提だとしてパンフレットを作成する。そして管理職の確かな理解をもって現場での活用推進を図るために校長会で「Googleアカウントの使い方」「Chromebookの使い方」の研修を実施する。ICTが如何に「使い勝手が良いもの」であることを、まずは管理職に分かってもらう。このことがGIGAスクール構想推進の大前提だと言う。

GIGAスクール環境整備を進めるうえで現場の教員にGIGAスクールの正しい認識を持ってもらう事が重要。

心理的安全

副校長という立場にあってGIGAスクール構想の具現化を推進する平田先生の3回にわたるお話の通奏低音にあったのは、職場の「心理的安全」というキーワードだった。コロナ禍の臨時休校時に「5月から新学年の学習を家庭学習で進める」ために、「心理的安全性の高い」職場づくりに尽力され、全教員の合意形成を目指された。

これまでICTに力を入れなかった学校でも、4月の在宅ワークの中で教育クラウドの活用方法を研究して、5月には全教員・全家庭でそれが使えるようになったと言う。ICT活用は「砂場遊び」で、「そこにどのような『学び』が造られてもそれでよい」というリーダーの姿勢は教員の心理的安全を保障する。そして合意形成ができれば、次の展開が早かった。

「理屈が分かり正しく理解すれば、皆、協力的で毎日新しいことに取り組んだ」と言うお話は、同じ立場を経験した筆者にとっては胸に響いた。3密を避けながらの授業観察、Meetを使った校内研究会を実施し、教員は「一人より全員の方が賢い」「みんなの少しの力が集まれば、できることがある」ことを実感していった。

校内で出る様々な意見を受け止め、教員全員の合意のもと進めることが、GIGAスクール環境整備の手順として必要。

キャプテンシー

小池氏の話を伺っていて、ラグビーにおけるキャプテンの役割が重なってきた。ラグビーは試合が始まればヘッドコーチはグラウンドには入れない。ゲームを実質コントロールするのは、キャプテンである。重要な局面では、グランドにいるキャプテンの判断がヘッドコーチよりも優先される。

まさに小池氏が実践されてきたことそのものが、GIGAスクール構想の具現化に向けた見事なキャプテンシーとなっていたことに感銘を受けた。千葉大学附属小では、昨年3月の臨時休校時に、小池氏がオンライン学習を試験導入した実践が全校での取り組みの助走となった。

千葉大学のMicrosoftとの包括協定を活用し、早い段階から小学生にもMicrosoftアカウントを配布。

また小池氏は、12月回で自身が「ICT準専科教員」となって、校内のICT教育を推進されてきたことをお話しされた。専科教員ではなく、担任と一緒にICTを推進していく役割であり、自身のリーダーとしての推進を振り返られた。INPUT型とか企業によるICT研修ではなく、最初からボトムアップの実践的研修を自然発生(OJT)することの大切さを実感されたという。

GIGAスクール構想具現化に向かうそれぞれのアプローチ

倉敷市の場合

小学校で複式が6校、単式が7校、中学校では単式学級が1校ある倉敷市においては、オンライン授業は極めて有効な学習方法だ。少人数学級同士の遠隔合同授業、不登校児童生徒の支援、さらには病弱な児童の支援が可能となる。倉敷市にある大原美術館と院内学級をつないでの授業実践も行われた。

複式学校同士を繋ぐことで情報を共有すれば、例えば低学年の生活科で「同じ倉敷でも違う夏がある」ことを実感できるし、3校でのビブリオバトルは子供たちの表現の方法を工夫する動機となったという。

オンラインによる遠隔授業は、

  • 他校の風を感じる
  • 一人一役
  • メタ認知力の喚起
  • 他者意識において極めて効果が期待できる

との報告がなされた。

 

3名のお話を伺っていて、コロナ禍における休校期間に学校と家庭とが子供たちの「学び」を保障するために、不十分なICT環境でありながらもオンライン学習に取り組んだことが、GIGAスクール構想推進に向けて大きな財産となったことが伺える。

町田市立藤の台小学校の場合

3蜜を避ける「必要はICT活用の母」であるとして、Google Meetを使った朝会が定着し、定番となっていった。そして教科書の記述を参考にカメラ機能を活用するなど「必然的にICT活用」が実施されてきた。すると「子供を信じて任せる」ICT活用が行われるようになった。子供たちは作成したドキュメントやスライドをClassroomで提出したり、自ずとドキュメントやスライドを委員会活動で活用するようになったという。

さらには不登校の子供たちへの対応として、家庭訪問時にコンピュータによる遠隔授業への参加を家庭に促すなど「ICT活用で教育機会確保」するようになった。

千葉大学附属小学校の場合

3月の臨時休校時に小池氏が行ったオンライン学習が助走となって、4月からの本格導入へと繋がっていった。引き続く休校にあって、教員は在宅での勤務ではあったが、Teamsによる非同期型の学習を必須に、同期型の学習を任意で行った。

学校が再開された6月から7月は、オンラインと対面のハイブリッドによる学習を実施し、分散教室への遠隔中継も行ったという。そして極め付けは、附属小学校特有の条件から、7月後半には熱中症対策としてオンライン通学にもチャレンジしている。

第2クールは中教審答申の具現化

中教審の答申(1/26)の各論6で述べる「教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)ことで個別最適な学びと協働的な学びを展開することが必要」の具体に関わる、「実践知」に溢れた第2クールであった。


Writing by

合同会社MAZDA Incredible Lab
松田 孝

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