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【セミナーレポート Vol.3】GIGAスクール構想実現のリーダー群像とは?

【セミナーレポート Vol.3】GIGAスクール構想実現のリーダー群像とは?
― GIGA導入目前の今、起こりうる問題とその対策とは? ―

3月末に文科省がGIGAスクール構想に関わって、全国の自治体にその整備状況を尋ねた結果を公表した。結果、「全自治体等のうち1,769自治体等(97.6 %)が令和2年度内に情報端末等の納品を完了する見込み」と回答した。

はたしてGIGA導入目前の今、起こりうる問題とその対策をめぐって、最前線で活躍するリーダーたちに率直に語ってもらった。

レノボオンラインセミナーの第三クールに登壇したのは、第2クールと同じく尾島正敏(倉敷市教育委員会情報学習センター館長)氏、平田勇治(東京都町田市立藤の台小学校副校長)氏、小池翔太(千葉大学附属小学校教諭)氏の3名である。

2月、3月の2回にわたって、本格導入時に学校現場が直面するであろう課題やGIGAスクールの本質を踏まえた情報端末と高速通信ネットワークの活用による教育実践の具体ついて3名からお話を伺った。

  • 倉敷市教育委員会情報学習センター館長
    尾島 正敏氏

  • 町田市立藤の台小学校副校長
    平田 勇治氏

  • 千葉大学教育学部附属小学校教諭
    小池 翔太氏

端末の保管管理と運用のベストバランスの見つけ方

せっかく配備された情報端末の有効活用は誰しも考えることだが、現実の学校環境においてそれを阻害する(?)のが充電保管庫である。もちろん情報端末は給電しなければ使えないため、子どもたちが下校する時に充電保管庫にしまうが、問題は登校して情報端末をいつ取り出して、子どもたちが自分の手元に置くかは、有効活用にとって極めて重要な実践知である。

尾島氏はこのことを「重要な課題」として捉えていると言う。倉敷市では「取り扱いの指針」に、子どもたちが「朝、登校したら保管庫から情報端末を出して、帰るときにしまう」ことを明記した。何故なら、学校現場の実態を見れば、授業中に端末を取り出すだけで5分は優にかかる。使用後に都度、保管庫に返すのは時間の無駄になる。

では保管庫から取り出した端末を日中、どこに置くのか。これも大きな課題となる。子どもたちの机の中はすでに教科書や道具箱でいっぱい。ロッカーも習字道具、絵の具セット、体操着でいっぱい。1年~6年生の発達段階も考慮して、考えていなかなればいけない課題だと力説された。

平田氏は、「朝、子どもたちが登校したら、保管庫から情報端末を取り出し、ログインして端末が正常に動くかを確認することが、授業準備として極めて大切になる」と述べる。発達段階を踏まえれば、高学年は机の中、低・中学年はロッカーの上にブックスタンドを用意して、班ごとに情報端末を立てて保管する等のアイディアを示された。

小池氏からは、附属学校特有の考え方を聞くことができた。

筆者は公立小学校の校長職にあったため、情報端末の取り出しや保管は、生徒(活)指導の一環として、学校全体のルールの策定が必要だと考えていた。しかし氏は、端末の保管等めぐる問題を「学級経営の範疇として捉えて、充電するタイミングも子供たちに考えせさせる」取り組みがあることを紹介された。

小池氏の提言は極めて刺激的に感じられたが、筆者はこの問題を是非、それぞれの学校で論議を交わして欲しいと願っている。何故ならこの行為の是非をめぐる議論は、改めてGIGAスクール構想の目指すところ、そして授業の在り方のみならず、それぞれの教員の教育観の問い直しを迫るものになると考えるからだ。

3月回では、端末の保管と同様にキッティングの問題も話題に上った。

子どもたちが初めて情報端末に触るときの状態がどうなっているかも、自治体によって様々な状況が想定される。契約によって納入業社が全て行って、子どもたちは自分のIDとPWを入力しさえすれば活用できる状態になっている学校と、ネットワーク接続や初めての端末へのログインを子どもたち自身で行わなければならない学校もある。

平田氏は、「トラブルが起きたらどうするか。教員の心理的不安をいかに和らげるよう対応するか」が学校体制として重要だ、と指摘する。全校での対応が必要になる当初は、6年生が下の学年の導入時間に一緒に作業を行う等の工夫を紹介された。この取り組みは子どもたちのスキルUPにも繋がるし、教員の心理的負担を和らげる効果も抜群だと述べられた。

GIGAスクール構想の本質は一人一アカウント

小池氏は、GIGAスクール構想のコンセプトは、「デスクトップでローカルで学ぶことではなく、クラウドを前提にしたアカウント活用がその本質だ」と言い切る。

現在のICT活用に関わる論議は、「物理的に端末をどう活用するかにフォーカスしすぎで、アカウントの活用という本質を忘れてはならない」と釘をさす。

平田氏は「現場の教員は、なかなかクラウドによるアカウントを理解できないでいる。クラウドを意識させるには、情報の共有と共同作業がうってつけだ」と述べる。

学習支援システムに搭載されているテキストマイニングを活用することは、まさに「クラウド活用であって、キーワードを手がかりにデータの分析と活用ができる」「共有、協働からビッグデータ解析等、先生方が使い始めればクラウドの良さがだんだんと分かっていく」と明るい兆しも述べられた。

尾島氏からもテキストマイニングを活用した授業実践が報告された。

年度当初、学級目標を考える学級活動で、「子どもたちの考えを文章化したものをテキストマイニングして、そこにある共通ワードを入れて目標を考えさせる」ことで授業は拡散しないと紹介された。

また今、大きな問題となっている情報端末の持ち帰りも、「一人一アカウント」の意識をもっていれば、家庭で子どもが使用する端末があれば持ち帰りはいらない、と指摘された。今は、教員も「自分の端末じゃなければ、という意識が強い」「職員室で職員が使う端末が足りないというが、授業中は端末は空いているのだから、自分のアカウントを利用すれば有効活用ができる」と指摘する。

クラウド活用が前提で、一人一アカウントの意識を持ちさえすれば、どの端末を使っても、同じ学習環境が開けることの理解とその体感こそが、まずは教員にとって急務であることを感じた。

GIGA導入目前!!

文科省はWebサイト「GIGAスクール構想の実現について」を随時更新しているが、3月に全国の都道府県教育委員会教育長等に発出した「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について」(通知)を掲載し、「GIGAスクール構想本格運用時チェックリスト」を公表している。

そこに記された

  • 「管理・運用の基本」
  • 「クラウド利用」
  • 「ICTの利用」
  • 「研修・周知」
  • 「組織・支援体制」

の5つの観点をめぐる課題解決に向けて、学校設置者と学校現場との密な連携体制の構築こそが、GIGAスクール構想の成否の鍵となる。

今回も様々な実践知が紹介された。これらをそれぞれの学校で活用いただき、真にGIGAスクール構想が具現化されることを願って止まない。

Writing by

合同会社MAZDA Incredible Lab
松田 孝

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