ThinkStation完全検証 ~達人は3Kを選んだ、ウルトラブックThinkPad W550sでAutoCAD 2016の戦力となるか?
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ThinkPad W550sは薄型化、軽量化を行い、グラフィックスにはNVIDIA Quadro K620Mを搭載、Autodesk AutoCAD等に対応したモバイルワークステーションの最新機種。グラフィックスはワークステーション用を搭載するが、やはり気になるのはパフォーマンス。本体の薄さや軽さから果たして実業務にどれだけ使えるのか疑問に思っていた人もいるかもしれない。そこで最新Autodeskソリューションを使いこなすエキスパート、達人Mr.Xに使い心地、そして使いこなしのポイントや導入ポイントを語っていただいた。

薄型で“ウルトラブック”でもあるThinkPad W550s
薄型で“ウルトラブック”でもあるThinkPad W550s

軽量コンパクトなW550s

最初にThinkPad W550sの紹介をしておきたい。モバイルワークステーションとしてThinkPad Wシリーズは好評を得てきたが、ThinkPad W550sでは大幅に軽量化、薄型化を図り、ウルトラブックとして持ち運びやすさにも注力したモデルとなっている。CPUは最新のインテル® Core™ プロセッサーファミリーを搭載、ワークステーションとして業務で活用するため、ソフトウェア各社からISV認証を得ていることも、モバイルワークステーションとして重要な要素を抑えている。
本体の重量は約2.16kg。モバイルノートPCとして考えれば重い部類かもしれないが、ワークステーション用グラフィックスのNVIDIA Quadro K620Mを搭載していること、そして15型の大型液晶を備えて絶対的なサイズが大きいということを考慮すれば、決して重いものではない。従来機種のThinkPad W540の約2.72kgに比べれば大幅に軽量化している。
薄さもポイントで、ThinkPad W550sの厚みは22.45mm。フラットな形状のため、わずかな足の出っ張りがある程度で、サイズさえあれば薄型のカバンでも収納できてしまうだろう。今までモバイルワークステーションを持ち運ぶとなると、ある程度、重量に対する覚悟が必要だったが、これなら大きめのカバンならば厚みを気にせずに収納できる。
なお、ThinkPad W540とのボディサイズや重量の比較は、下記記事に詳しく記してあるので、ぜひ参考にしていただきたい。

ThinkStation完全検証 ~待望の薄型軽量、しかもQuadro搭載!ThinkPad W550s

達人Mr.X ──荷物の重さが減った!

今回、ThinkPad W550sを“実戦投入”した方は「達人Mr.X」。AutoCADをはじめAutodeskソリューションを使うエキスパートだ。据え置きのワークステーションで設計をすることはもちろん、モバイルワークステーションを持ち歩いてプレゼンを行ったり、現場で作業したりレンダリングも行う。そのため、以前からモバイルワークステーションを活用していた。
結論から言えば、今回、ThinkPad W550sの導入は非常によかったとしている。ThinkPad W550sに変えたことで、持ち歩く荷物の総重量が大幅に減少した。
本体以外にも重い部品の塊でもあるACアダプターも小型・軽量化している。ACアダプターの軽量化は本体ほど注目はされないが、本体と並んで重量を占めているため、持ち運び重量という点では非常に大きな意味がある。小型軽量化は本体の低消費電力化によって実現できた。
Mr.Xが持ち歩くモバイルワークステーションのセットは、ThinkPad W550s本体とACアダプター、マウス、変換ケーブル2本。マウスは折りたたみ式のモバイル用途のもので、ThinkPad W550sには本体には独立クリックボタンが復活したトラックポイントを装備しているが、CAD操作にはマウスのほうが使いやすい場面もあり、適材適所で活用している。

達人Mr.Xが持ち歩くモバイルワークステーションのセット
達人Mr.Xが持ち歩くモバイルワークステーションのセット

さらに、さまざまな現場でのプレゼンに対応するため、Mini-DisplayPortからHDMIとMini-DisplayPortからDisplayPortの変換ケーブルを持ち歩いている。会議室のプロジェクターはアナログVGAとHDMIが主流で、アナログVGAは本体装備のインターフェースで事足りるが、HDMIは変換ケーブルで対応している。現場作業で液晶モニターに接続することもあり、HDMIやDisplayPort、ふだんは持ち歩かないがDVIなどいずれのインターフェースにも変換しやすく、これから増えてくる4Kといった超高解像度にも対応できるMini-DisplayPortは便利という。
なお、重さに関して達人Mr.Xは従来機を使っていたときはあまり気にしていなかったが、ThinkPad W500sに変えてからは荷物の軽さを大きく実感しているという。

各ソフトウェアの認証を得ている高い互換性

ThinkPad W550sの軽量化のメリットはよく理解できても、その反面、心配されることはパフォーマンスと互換性だ。一般的に軽量化、省電力化は処理性能とは相反する部分で、大幅な軽量化を実現したThinkPad W550sだけに心配となるもの理解できる。そして、パフォーマンスが足りないために、ソフトウェアが正常に動かないなどの恐れもある。

しかし、その点についても問題なし。まずは達人Mr.Xが活用している点から、十分な性能を持っていることが証明されたようなものだ。もちろん、ソフトウェア認証についても、3D CAD等の多くのソフトウェアから認証(AutoCAD 2016は2015年6月に取得予定)を得ている。

ISVサーテフィケーション

AutoCADは新しいAutoCAD 2016になってから、新しいレンダリングエンジン「RapitRT」を採用している。そのAutoCAD 2016ではグラフィックパフォーマンスの設定を行う画面があるが、そこですべての項目にチェックを入れられる。この設定画面は、使用するPCのハードウェアをチェックしており、もし、ハードウェアや対応しなければ、グラフィックスのハードウェアアクセラレーションのチェックが入れられない。 ここですべての効果項目にチェックが入れられることからも、互換性は問題ないと言えよう。

ハードウェアアクセラレーションのチェックが全て入っている。NVIDIA Quadro K620Mとの組み合わせで互換性にも問題がない
ハードウェアアクセラレーションのチェックが全て入っている。NVIDIA Quadro K620Mとの組み合わせで互換性にも問題がない

出先で十分な品質のレンダリングが可能なパフォーマンス

互換性の上で問題ないことがわかれば、次に気になるのが実際のパフォーマンスだ。問題なく動くということが証明されていても、それがどれだけ快適に動作するか、処理時間を費やさずにできるかはまた別問題。しかし、CADを活用している達人Mr.Xが不満なく使っていることからも、その点の心配はしなくてよさそうだ。
実際、達人Mr.XはThinkPad W550sは打ち合わせやプレゼンといった出先に限った用途だけでなく、特に大規模なものでもなければその場でレンダリング等も行っている。レンダリング性能を測る目安としては、AutoCAD2016では、レンダリングはワークステーションの処理性能に合わせた処理を行うことができ、最も時間がかからない「コーヒーブレイク」という名の10分で行う処理を選んでも、十分なものを作り出すことができるという。処理性能が低ければ、質がぐっと落ちてしまう処理だそうだが、ThinkPad W550sなら問題ない。

InfraWorksで画像や建物の3Dデータを取り入れ、広範囲の表示でもパフォーマンスの問題なく表示が可能
InfraWorksで画像や建物の3Dデータを取り入れ、広範囲の表示でもパフォーマンスの問題なく表示が可能
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また、ワークステーションを持ち歩く第一の目的である出先のプレゼン時の描画能力という点でも強力なパフォーマンスを発揮。具体的にはAutodesk InfraWorksで約30平方キロメートルの範囲の街並みを再現、地形、建物の3Dデータを含み、しかも山や川がほとんどない大都市という非常に重いデータを3Dで動かすことができるという。
そして、モバイル機として気になるバッテリーの持ちだが、100%フル充電してプレゼンにのぞみ、1時間ほど3D描画をフルに行っても半分ほどの減りだという。
なお、達人Mr.XのThinkPad W550sは内蔵3セルとリア着脱式3セルの合計6セルという組み合わせ。さらに容量アップをするならば着脱式に6セルを選んで合計9セルという組み合わせも可能だが、持ち運び重量や薄さを考慮して合計6セルを選んでも、電源が借りられない場所でも十分活用できそうだ。

2880×1620ドットの3K液晶で快適な作業を実現

ThinkPad W550sの液晶は、フルHD(1920×1080ドット)と3K(2880×1620ドット)の2タイプから選択できる。達人Mr.Xが選んだのは3K解像度。どちらを選んでも15型なので、3Kを選ぶと表示が細かくなり、文字や線が見えづらくなるのでは、という心配がある。
その点についても達人Mr.Xは、3Kを選ぶべきと力説している。AutoCAD 2016について言えばリボンインターフェースに統一されたことで、小さい表示でも問題がなくなっているという。また、InfraWorksでは、タブレットでの操作を想定したような画面になっているので、こちらも問題なし。
そのほかのソフトでは表示が小さくなることもあるが、実際に3Kで作業をしはじめると、何よりも一度に表示できる情報量が広く、描画するエリアが広くなるので、図面を見るにしても範囲が広くなる。これは作業効率のアップを示しており、今や3Kの解像度は手放せないものになっているという。

1920×1080ドットでのAutoCAD 2016の画面。これでもアイコンは小さくなるが、15型液晶に表示する上で作業上の問題は特にない

一方、3K解像度を選ぶ際に、もうひとつ心配されることがある。表示範囲が増えることでグラフィックスのメモリーを消費してしまい、描画速度が遅くなる恐れもそうだが、グラフィックスの処理能力に依存するようなレンダリングなどのパフォーマンス低下だ。
これについても達人Mr.Xは、多少の影響はあるとしたものの、著しく低下することはないという。実際に使っている中では、少々のパフォーマンスダウンよりも、やはり表示範囲の拡大というメリットをとりたいとのことだ。
もうひとつ、ThinkPad W550sならではの液晶画面活用法がある。プレミアムThinkPadシリーズの伝統的な特徴のひとつに液晶の180度開きがある。プロジェクターがない、または使うほどではない場合に、直接液晶画面で3Dを見せたりすることがやりやすい。
水平まで開かない液晶画面の場合、画面を見せるためにはPCの向きを変えたりする必要があるが、対面の人に対して、同じ画面を見ながら内容を検討することは難しい。180度開いてしまえば、そのままでも相手に見せられ机を囲んで表示内容を確認できる。

液晶は180度開いてフラットになるため、画面を囲んでの打ち合わせにも対応する
液晶は180度開いてフラットになるため、画面を囲んでの打ち合わせにも対応する
達人Mr.Xによれば、180度開きのためのヒンジの設計は、同じ構造設計をする者としてなかなか興味深い構造とのことだ
達人Mr.Xによれば、180度開きのためのヒンジの設計は、同じ構造設計をする者としてなかなか興味深い構造とのことだ

ThinkPad W550sでオススメのスペック

実際にAutoCADを使いこなす達人Mr.Xに、オススメスペックを聞くと、予算の制約がなければ、3Kの液晶、512GBのSSD、16MBメモリーがおすすめだという。

ThinkPad W550s
AutoCAD/CIM向け W550sおすすめ構成
プロセッサー インテル Core i7-5500U プロセッサー
メモリー 16GB(8GB×2)
グラフィックス Quadro K620M
ストレージ 512GB SSD
ディスプレイ 15.5型 3K(2,800×1,620)

3K液晶は今まで説明したとおり作業効率をアップさせる。ただし、3Kによる表示の小ささを心配したり、出先での打ち合わせやプレゼンが主用途で搭載液晶による作業が少なかったり、予算の都合があればフルHD液晶でも問題はないという。
メモリーはThinkPad W550sのスロットは2つあり、デュアルチャネルでのアクセスとなるため、パフォーマンスの点からもできれば2枚挿しとしたい。4GB×2の8GBでも容量的に十分なことが多いが、将来、増設の必要があった場合に2枚とも無駄になる。となれば、最初から8GB×2の16GBを選択も検討すべきとしている。
ストレージはソフトウェアやデータファイルの容量から選ぶと、必然的に大きなものが必要になる。容量は3D CADソフトウェアは、シリーズすべて入ったSuite製品を使うような場合はインストーラが大きく、インストール後の消費量も桁違いに大きい。
256GBではソフトウェアのインストールでほぼ使いきってしまうこともあり、512GBが必須というのが現状だという。使用するソフトウェアが限定されていれば256GBでもよいが、生成されるファイルが非常に大きくなるものもあるので、それも必ず考慮して選ぶ必要があるという。また、パフォーマンスの点からSSDを選びたいところだが、予算に制約がある場合はHDDよりも高速なSSHDを選択するという方法もある。
そして、持ち歩く機材だけにサポートも重要になる。ThinkPad W550sの標準装備は固定スペックモデルで3年、Webサイトのカスタマイズモデルで1年の引き取り修理となっている。どちらも期間、内容ともグレードアップが可能で、どこまで備えるかは用途次第だが、安心して使い続けるためにも、必要なサポートは備えておく必要があるとしている。