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特集

ThinkPad 選ばれる理由

ThinkPadと育てた“日の丸”オープンソース

「Ruby」——1993年、ある日本人が独りで開発を始め、今や世界で屈指の人気を誇るプログラミング言語である。その理由は「楽しさ」にあり、「言語を作る人、使う人、学ぶ人すべてが楽しめることを目的」(注)としている。

そして、その開発者がまつもとゆきひろだ。現在はネットワーク応用通信研究所のフェローとして島根県松江市に在住。同市の名誉市民でもある。地方創生の担い手としてこの地に移り住んだのかと尋ねると、「そんな言葉ができる前から住んでいますから」と照れ笑いする。

1993年、静岡県浜松市で勤務していた頃にRubyの開発に着手。当時は「Hello, world!」という文字列を出力するために半年を要したが、その後開発は順調に進む。転職して名古屋勤務となった1995年にRubyをオープンソースとしてインターネットに公開した。

PROFILE

ネットワーク応用通信研究所 フェロー
まつもと ゆきひろ 氏

1965年大阪府生まれ。筑波大学第三学群情報学類卒業。公開とともに世界中のプログラマーが絶賛したプログラミング言語「Ruby」の生みの親として知られる。97年より島根県在住。2009年には島根県松江市名誉市民の称号を与えられ、「Ruby」を活用した街おこしにも取り組んでいる。

「こんなものを作りましたからどうぞ見てくださいって感じで。そうしたらまだSNSなどない時代ですから、メールでやり取りをするメーリングリストでコミュニティーのようなものができて、最初の2週間で200人くらいが参加してくれたんです。世の中には10人くらいしかユーザーがいない言語が山ほどあるにもかかわらず、なぜそれほどの短期間でRubyが多くの人に注目されたのか、実は自分でもいまだによくわからないんですよね(笑)」

前職で東京勤務を命じられるも、固辞。知人が島根県で起業したことを機に、1997年から今の地に住み始めた。世界中の誰もがどこででも自由に使えるオープンソースゆえ、どの国で、何人が使っているのかという情報は開発者にもわからないという。ただし、当初は日本語のみで公開したRubyについて、英語のウェブサイトを用意したところ海外から質問のメールが殺到した。

「あなたの言語は面白そうだから本を書きたいと言うから、ああそうですかって。すると、その本が結構売れて。次はカンファレンスを開きたいと言われて、最初は2001年にアメリカで、参加者が30人くらいの小さな規模のものでした。それ以降、毎年やっているのですが、今では700人くらいの人が来てくれるようになりました」

とんとん拍子に世界中で支持が広がり、現在はアメリカをはじめ、ヨーロッパ、アジア、アフリカと、南極以外の全大陸でRubyに関するカンファレンスが開かれている。

1993年当初はデスクトップ型のワークステーションで開発に着手。その後、OSにリナックスを載せたノートパソコンで開発を進めるようになる。ThinkPadを使い始めたのはX31からで、かれこれ十数年になるという。

「私の仕事は主にプログラムを開発したり講演用に文章を書いたりすることなんですね。そういうときにトラックポイントが便利なんです。正直に言うと(一般的にノートパソコンが装備している)トラックパッドはあまり好きじゃありません。意図的に触らなければ動かないっていうのが理想的です。本当に毎日何時間も触っている道具なので、私にとっては安心感とか、信頼性が大事なわけです」

まつもとは会社も自宅も移動中も、すべてこの1台のThinkPadで賄う。

「デスクトップを使わないのは、いつでもどこでも同じ環境でいたいからです。パソコンはいつも鞄に突っ込んで持ち歩きたい。Rubyってまるで自分の子供を育てているようなものです。毎日世界中から相談や質問などいろんな要求が来る。いちいち全部に答える義理はないんですけど、そうした中に私自身が見落としていたものなどが結構ある。それがまた、未来のRubyの方向性を考えるきっかけになるんです」

そして、最後にこう話した。

「実は私がRubyの開発を始めてから来年でちょうど25年なんです。今では自分の役割を1つに限定することは難しいんですけど、開発者というよりはRubyが進む方向性を示すプロダクトリーダーとして、また言語デザイナーでありプログラマーでありたいと思っています。ThinkPadよりちょっとだけ後輩ですけど、負けないように頑張っていきたいですね」

(注:まつもとゆきひろ『Rubyプログラミング入門』より引用)

(敬称略)


まつもと氏がThinkPadを選ぶ理由の1つが、OSにリナックスが使えること。「ThinkPadは代々いくつかの例外を除いてリナックスのことを考えてくれていて、USだとリナックスプリファードモデルもあるんです。それがあるってことはリナックスが動くってことなので自分でいろいろ試して設定しているんですが、ぜひ日本でもリナックス対応モデルを出してほしいですね(笑)」。X31に始まったThinkPad歴はこれまで計7台、現在はインテル® Core™ i7 プロセッサー搭載のT460sを使用している。

(文:藤野 太一/写真:栗原 克己)

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