ThinkStation完全検証LABO ~今、本格導入が進むCAD on VDIの実力とは? ~レノボが提供するワークステーション仮想化

CAD on VDIの導入が本格的に進んでいる。サーバー内に3D CADの仮想環境を構築し、クライアントの画面上でそれを再現するというもので、クライアント側はPCだけでなくタブレットやスマートフォンでもかまわない。しかもクライアント側にデータを残さない運用ができるためセキュリティ面でも注目されている。この仕組みは少し前から登場していたが、なぜ、2014年末の今、本格的な導入が始まったのか、「System x CAD on VDI」を推進するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)の専門チームに話を聞いた。

CAD on VDIの専門チーム。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ・センターにて
CAD on VDIの専門チーム。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ・センターにて

リモートデスクトップとは違う、3D CAD向けのシステム

最初に仕組みを説明しておくと、CAD on VDIはサーバー上で仮想的に動いている環境を端末側で再現する。端末側では画面と操作部分だけを担うため、既存の3D CADを使っているワークステーションのような処理パワーも必要ない。また、画面だけを展開するため、端末側にデータを残しておく必要がなく、セキュリティ面からも安心となる。
と、ここまでの仕組みや特徴は事務作業等で広く使われているリモートデスクトップ機能と同じだ。ではそれとCAD on VDIは何が違うかと言えば、3D CADに対応できる画面表示のパフォーマンスだ。

CAD仮想デスクトップ環境の構成イメージ
CAD仮想デスクトップ環境の構成イメージ

たとえば、事務作業で表計算ソフトで数表を作成する場合、作業中に画面が書き換わっている部分は入力している数値とその周り程度。しかし、3D CADの場合は操作のたびに画面の大部分が連続して書き変わり、非常に細かな場所まで正確に描画されなければならない。しかもいわゆる“カクカク”した動きではだめで、画面がスムーズに動かなければ設計現場では使い物にならない。
既存のリモートデスクトップ上で動画を再生してみた経験があれば理解していただけると思うが、数表を作成しているときと違い、とたんに画面の動きが鈍くなる。3D CADは動画再生よりもさらに複雑な描画を行うため、通常のリモートデスクトップのシステムでは全く対応できないのだ。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ビジネス開発エンタープライズソリューションズの大月哲史 CAD on VDI全般についてまとめている
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
ビジネス開発エンタープライズソリューションズの大月哲史
CAD on VDI全般についてまとめている

では、CAD on VDIはどのように3D CADに対応させているかというと、サーバーに仮想環境に特化したグラフィックボードを搭載し、専用のクライアントとの間では3D グラフィックに最適化したやりとりを行うことで実現している。そのため、リモートデスクトップとは次元の違う描画を実現する。
また、リモートデスクトップの利用経験がある方は、データ量が多くなってネットワークに負担をかけるのでは? という懸念があるかもしれない。しかし、3D CADについては事情が異なる。一般的にCADのデータファイルは表計算やワープロに比べて桁違いに大きく、ローカルで作業をする場合は最初のデータ転送に長い時間を費やすことになる。しかも、作業終了時にデータを戻し、セキュリティ上、手元のPCからデータを消し去る作業も必要になる。
それが、CAD on VDIではサーバー上で立ち上がるため、膨大なデータのやりとりはデータセンター内で完結してしまう。手元のPCには画面だけを転送するため、すぐに作業が開始でき、作業後に更新したデータを転送するという手間もない。このため、結果的にデータファイルを転送するよりも早く済むことが多く、ネットワークへの負荷も特別に大きくなるわけではない。データが膨大な3D CADならではの特性と言えよう。
さらにこのほか、CAD on VDIは下記のような課題にも対応できる。

図:ワークステーションを取り巻く課題をVDI化が解決
図:ワークステーションを取り巻く課題をVDI化が解決

作業場所や端末の制約をなくす

そして、CAD on VDIではいつも同じ端末の前で仕事をするという制約もなくなる。ふだんは大画面のPCの前で設計を行っていても、会議室に移動してミーティングの場で手直しをすることもできる。ミーティングの場は社内だけでなく客先であったとしても、ネットにつながってさえいれば場所を選ばない。また、リラックスした場所で内容を見直しすることや、クリエイティブな要素のある設計なら景色の良い場所で作業をすることも可能だ。
もちろん在宅勤務も可能で、その場合もオフィスと自宅の移動の際でもデータを持ち歩く必要がなくなり、データをどこかに置き忘れるということもない。
つまり、必要なものといえば、通信回線とデータを表示できる端末だけで、OSも選ばない。iOSやAndroid向けのクライアントソフトが用意されているものもあり、端末はタブレットやスマートフォンでもかまわない。これならもう場所も時間も制約がなく作業ができると言えよう。

タブレットやコンパクトなノートPC上でもCADの画面を再現できる。手前はLTEモデルも用意される10.1型Windowsタブレット、ThinkPad 10
タブレットやコンパクトなノートPC上でもCADの画面を再現できる。手前はLTEモデルも用意される10.1型Windowsタブレット、ThinkPad 10

なぜ、今が本格展開の時期なのか?

さて、ここまででCAD on VDIの概要を説明した。ではなぜ、今が本格展開の時期なのかといえば、ソフトウェア側のサポートが本格的に開始されたことだ。
CADのソフトウェアといえばハードウェアの認証はもちろん、グラフィックドライバーのバージョンまで指定して動作保証を与えている。認証されていないハードウェアやドライバーのバージョンでも全く動作しないわけではないが、業務で使う以上、安定して使うためには認証されたものを使うのは基本だからだ。
まず、最初の大きな動きは2013年6月にPTCが Creo 2.0 の iDataPlex + GRID + Citrix(パススルー)環境認証を発表し、やっと高い信頼性が要求される現場にも導入が可能になったことから始まる。それから1年あまりの間に、CAD on VDIの本命とも言われ、より効率的な「vGPU」環境でも認証が進み、いよいよ本格的な展開を迎える時期が来た。特に最近の動きをまとめたものが下記の表となる。

2013年
3月 NVIDIA GRID(K1/K2)発表
サーバーに搭載する仮想化前提のボード
1台のサーバーに搭載されるGPU数が増加(K1=8個、K2=4個)
6月 PTCがCreo2.0の iDataPlex + GRID + Citrix(パススルー)環境認証
10月 VMWare社 vDGA(GPUパススルー)サポート版リリース
それまでも動作していたが正式なサポート版がアナウンス
12月 Citrix vGPU(HWによるGPUシェア)サポート版リリース
1台のサーバーに集約可能なVM数の制約が8倍に増加(K1=64、K2=32)
2014年
3月 Siemens PLM SW がNXの仮想環境でのcertification発表
vGPU(Citrix)、パススルー(VMWare,Citirx)環境
8月 VMWare社がvGPUのβ版デモ実施(@US)
アーリーアクセスプログラム募集開始
11月 VMWare vGPU β版実機デモお披露目(@vFORUM)
LESブースではオンサイトデモ&リモート接続でのデモ実施