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導入事例

国際医療福祉大学大学院 杉本真樹医師・NTT東日本関東病院

VRの活用を通じて医療の未来を創造しようとする医師の思いとは?モバイルワークステーションだから広がる高度な医療IT。

導入について

人間よりもはるかに繊細かつ精密なアームを持つロボット手術の期待と課題

がんが日本における死因の第1位となってすでに久しく、「国民病」といっても過言ではない状況です。なかでも毎年9万8000人以上が発症し、急増しているのが前立腺がんです。主な治療法は外科手術となりますが、前立腺は狭い骨盤の奥深く膀胱の真下に位置しているため、手術操作が容易でなく、術後の排尿障害や性機能障害などの合併症を生じることもあります。

そこで登場したのが、手術支援ロボットです。患者の腹部に5mmから1cm程度の小さな穴をあけ、体内の様子を見る3D内視鏡とロボットアームを挿入して手術を行います。従来の開腹手術と比較して出血量が少なく、術後の疼痛が軽微で、患者への侵襲(身体的な負担)を少なくするともいわれます。

NTT東日本関東病院は、こうしたロボット手術のフロントランナーとして知られています。最新鋭の手術支援ロボット「ダヴィンチXi」をいち早く導入。さらに2015年7月、国内トップクラスのダヴィンチ執刀経験を持つ志賀医師が泌尿器科部長に赴任し、現在では同院におけるロボット手術は100件を超え、前立腺がん手術のほとんどがロボット手術に移行しました。

ただ、ロボットは人の手よりもはるかに繊細かつ精密な手術を可能にするとはいえ、誰でも操作できるわけではありません。ロボットを文字どおり自分の手のように使いこなせるようになるまでには、相当な熟練を要することになります。

医師に本物の臓器と同等の"立体感"と"触感"を感じてもらえることを目指す

執刀医とロボットとの間にあるギャップを埋めるべく、志賀医師とタッグを組んでVR技術を応用した支援システムを医療現場に持ちこんだのが、杉本医師です。

杉本医師自らが開発を牽引してきたそのVR手術支援システムは、「OsiriX」という医用画像解析アプリケーションを中心に、複数のセンサー技術とVR技術を組み合わせて開発されました。患者のCT画像をコンピューターに取り込んで3Dモデル(VR解剖図)を生成し、VRとしてヘッドマウント・ディスプレイに描出するもので、「執刀医のすぐ側で、いわば手術の"VRカーナビゲーション"のような役割を担います」と杉本医師は説明します。

そもそも医療の現場に、こうした高度なITを導入しようと考えたきっかけはどこにあったのでしょうか。

2004年にとある地方の病院に赴任した杉本医師は、地域医療の限界を感じました。もっとIT技術をとり入れ効率的な医療を目指せば、より多くの患者を救うことができ、医師や医療従事者、そして患者にも高度の医療サービスを提供できるようになるはずだ——。

そのひとつの答えとして行き着いたのが医師が自ら開発するアプリケーションの活用だったのです。

「患者の3D画像を単に2D画面に表示するだけではなく、医師がその空間に入り込めるような臨場感を持たせることにこだわりました。そうすることで病態に対する理解度をもっと高められると考えたのです。医師に本物と同等の"立体感"や"実体感"を直観的に感じてもらえることを目指して、3Dモデリングおよびその可視化の改良を重ねてきました。これが今でいうVRだったのです」と杉本医師は振り返ります。

具体的なアプローチとしては、WEBに公開されている多様なオープンソースのライブラリを組み合わせることで、高度なビジュアライゼーションを可能にしてきました。

「最近では、例えばVRのゲームエンジンなどもオープンソースとして無償で公開されています。これらのゲームエンジンに患者のデータをインストールすることで、医療用3D画像を高速に描出するアプリケーションができるのです」と杉本医師。この取り組みの結果として、医療現場のニーズをストレートに反映したシステムを、コストを最小限におさえ、なおかつ短期間で開発することができました。

「より多くの患者の治療に貢献したい、医療従事者のモチベーションを上げ、より良い医療サービスを実現したいという明確な目標が最初にあったからこそ、課題解決のための道筋を最短距離で見つけ出すことができました」と杉本医師は話します。

VR解剖図のリアルな3D表現とモバイルならではの機動性を両立

現在、VRナビゲーションシステムの運用プラットフォームとして杉本医師が活用しているのが、レノボのワークステーション ThinkPad P70 です。

実は開発時点から運用開始当初まで他社のPCを使っていたのですが、快適なVRを実現するには3Dグラフィックス性能が十分ではなかったこともあり、ポリゴン数を減らしてスムージングを表示していました。これではどうしても解像度や表示スピードに限界があり、リアルな立体感を得ることができません。

そこで杉本医師は、ThinkPad P70 を導入したのです。最新のインテル® Xeon® プロセッサーおよびQuadroグラフィックスを搭載したそのハイスペックなハードウェアによって、グラフィックス性能は飛躍的に向上しました。

「ゲームエンジンをはじめとする各種オープンソースのツールやライブラリとの整合性、そしてヘッドマウント・ディスプレイとの相性も非常に良く、高精細かつ鮮明な発色によるVR解剖図のリアルな3D表現が可能となりました。しかも、そのクオリティを維持したまま3D画像を360°の自由な方向に、遅延なく直感的にスムーズに動かすことができます。ThinkPad P70 のパフォーマンスにはとても満足しています」と杉本医師。そして決め手となったのが、こうしたワークステーションの高性能を"モバイル"のフォームファクターで活用できることです。

手術室のようなスペースの限られた医療環境に、大きなデスクトップやタワー型のワークステーションを設置したり、運び込んだりすることは手間がかかります。「これに対して ThinkPad P70 のようなモバイル・ワークステーションであれば、既存の手術室環境に影響を与えることなく手軽に持ち込んで、患者本人のCT画像などのデータを“その場”で3D解析や再構築ができます」と、杉本医師はメリットを強調します。

ところで、なぜ"その場"に持ち込み、迅速に準備ができることが、これほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、手術を初めとする医療行為は、時間との戦いだからなのです。

「患者が手術室に入り、執刀の準備が整うまでの時間が約30分。この時間に患者本人のCTスキャンデータを用いて、VR解剖図を生成すれば、執刀医と手術チームが患者の病態をその場で再確認でき、記憶が新鮮なまま手術に臨むことが可能となります」と杉本医師は話します。

また、医療の現場では、手術時間や手術室の変更、検査室への移動なども頻繁に発生します。患者のデータとその処理環境を、そのままどこにでも持ち運べるのもモバイルならではの利点です。容体の急変などで手術室の変更が求められた場合でも、モバイルならば準備がすぐに整えられるのです。

さらに杉本医師は、キーボードの打鍵性にも言及します。「ThinkPad P70 のキーボードはタッチが非常に柔らかく、音も静かで、医師にも他の医療スタッフにもストレスを与えません。手術室はもちろんあらゆる医療環境にとって、これは非常に重要なポイントです」

人間の感覚をより鋭ぎすますVR技術の開発を目指す

今後に向けて杉本医師は、VRナビゲーションシステムのさらなる機能強化と効率化を図っていくとしています。そうしたなかで、期待が高まっているテーマのひとつが、手術支援ロボットとVRナビゲーションシステムのシームレスなデータ連携の実現です。

「手術ロボットの内視鏡が映し出した患者の体内の3D画像をリアルタイムに、ThinkPad P70 のVR解剖図と重畳することができれば、まさに拡張現実(AR・Augmented Reality)カーナビゲーションのように、手術の『現在位置』や『進むべき方向』を手術視野上に示すことが可能となります」と、杉本医師は構想を描いています。

実際の前立腺がんの手術がどのように行われているのかというと、あたかも砂場の砂を掘り下げるように、徐々に脂肪の層をかき分けていき、大切な血管を避けながら、がんの病巣に近づいていくのだそうです。内視鏡を挿入しただけではそうした脂肪に覆われた内臓や病巣の様子は目視できないのですが、VR解剖図とリアルタイムに重畳することで、例えば「ロボットアームの1cm右側に血管がある」「あと5cm切り進めばがんの病巣に到達する」といった情報を可視化して提示することができます。

「がんの範囲を線で囲って明示する、大切な血管を傷つけそうになったら音と色でアラートを発する、次に行うべき処置や手順をVR解剖図上に図示してアドバイスするといった工夫を凝らしていくことで、将来的には経験の浅い医師の教育トレーニングにも役立てられたらと思います」と杉本医師は話します。

また、VRの技術そのものにもまだまだ改善の余地があります。現状のVRシステムでも実証されたように、3DVR画像はかなりの高レベルの臨場感を持たせられるのですが、手術前のCTデータと実験のリアルタイムな臓器の形は異なり、患部の触覚や微妙な動きなども再現する方法がありません。「そうした人間の感覚すべてに訴えかけるVR技術を開発したいのです」と杉本医師は話します。

例えばミックスド・リアリティも、大きな可能性を感じている技術の1つです。OsiriXで生成した3D解剖図を、プロジェクションマッピングの手法を用いて患者自身の身体に投影することで、血管や内臓、がんの位置を体表面に表示することができます。
そのほか、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)などの技術も積極的に取り入れながら、病気そのものに対する認知を深めていこうとしています。

杉本医師らが臨床を通じて確立しようとしている、これらのVRやAIなどの技術を広く普及し、日本の医療のあり方を変えていくためには、乗り越えなければならない壁があります。それは医療機器としての承認や他の医師への認知です。これらは、杉本医師個人や病院単独の取り組みでは困難です。

そこで杉本医師が目指しているのが多くの民間企業や官僚などと連携した産学官連携と共同研究・開発であり、「レノボならびにパートナーと、ぜひ共にチャレンジしたい」と考えています。将来の医療に向けた杉本医師の想いと、デジタルエコノミーに向かうレノボのエコシステムが融合することで、ヘルスケア分野にも破壊的イノベーションを起こしていくことが期待されています。

高精細かつ鮮明な発色による3D解剖図のリアルなVR表現が可能となりました。

国際医療福祉大学大学院
医療福祉学研究科 准教授
杉本 真樹 医師

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