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特集

Thinkシリーズのデザイン哲学

デビッド・ヒル(David W. Hill)

デビッド・ヒル(David W. Hill)

世界中のプロフェッショナルたちから愛用されているThinkシリーズは、卓越した性能・機能のみならず、その秀逸なデザインも大きな魅力です。Thinkシリーズのデザインは、お客様の成功に貢献するという理念のもと、ビジネスツールとしての優れた使い勝手と所有する喜びを同時に感じてもらえることを常に目指しています。

今回は、IBMの時代から一貫してThinkシリーズのデザインを指揮してきたLenovo本社 バイス・プレジデント 兼 チーフ・デザイン・オフィサー(最高デザイン責任者)のデビッド・ヒル(David W. Hill)に、Thinkシリーズのデザイン哲学について語ってもらいました。

─ ThinkPadのデザインが誕生した当時の話を聞かせてください。

ThinkPadのデザインを生み出したのは、IBM時代に製品デザインの顧問を務めていたリチャード・サッパー(Richard Sapper)氏です。サッパー氏は、ドイツの著名な工業デザイナーで、同氏が手がけるデザインには、実用的、理知的、論理的なドイツ流の設計思想とイタリア流のスタイリッシュさや遊び心が見事なまでに共存しています。

そんなサッパー氏が手がけたThinkPadのデザインは、日本の伝統的な料理として知られる松花堂弁当から着想を得て考案されたものです。日本にお住まいの皆さんならお分かりのように、ふたを閉じた状態の松花堂弁当は、とてもシンプルで静かなたたずまいをしています。しかし、ふたを開ければ、その中には色とりどりの料理が驚くほど美しく盛り付けられています。
ThinkPadもまったく同じように、PCを閉じている状態では黒くてシンプルな四角い箱ですが、ひとたび開けば革新と洗練に満ちあふれた操作環境が目の前に現れます。

─ 現在ではThinkシリーズ全体のシンボルにもなっていますが、ThinkPadで採用された黒い筐体と赤いアクセントが意味するものはなんでしょうか。

シンプルで黒い筐体と赤いアクセントの組み合わせは、プロフェッショナルの現場で使用される真の道具としての「実直さ」と、ユーザーに驚きや親しみを感じさせる「遊び心」を表現しています。こうした赤と黒を基調とするデザインを20年以上にわたって守り続けてきた現在、このデザインはThinkシリーズの大きなアイデンティティを形成し、特に感情の部分でユーザーとThinkシリーズをつなぎあう特別な価値をもたらしています。

ThinkPadが登場する以前のIBM製品は、ベージュとマゼンタを基調とするデザインをとっていました。このような既存のデザインから黒と赤を基調とする新たなデザインへと切り替える際には、会社全体として大きな決断が求められました。しかし、初代モデルのThinkPad 700Cが大きな成功を収めたことで、その斬新なデザインが社内外で広く認められ、逆にこのデザインをきちんと踏襲していくという流れが生まれたのです。

ThinkPad 700C

ThinkPad 700C

─ ThinkPadのデザインを考案したリチャード・サッパー氏は、ヒルさんにとってどのような存在ですか。

リチャード・サッパー(Richard Sapper)

リチャード・サッパー(Richard Sapper)

サッパー氏は、私にとって唯一無二ともいえるメンター(仕事・人生上の指導者、助言者)であり、長年にわたってさまざまなことを伝授していただきました。サッパー氏から学んだことを手短にお伝えすることはとても難しいのですが、例えば「どこか改善できる点がないか、常に探し続けなさい」や「プロダクトに与える個性を大事にしなさい」といったアドバイスを受けています。これらは、サッパー氏とともに作り上げてきたThinkシリーズのデザイン哲学にも直結するものといえるでしょう。

─ Thinkシリーズのデザインに携わっているスタッフについても教えてください。

レノボは、日本、米国、中国の3拠点に研究開発施設を配置し、イノベーション・トライアングルを形成しています。それぞれの地域には大きな時差がありますので、この3拠点でデザイナー同士が連携をとることにより、24時間体制でデザインワークを進められています。そして、それぞれの拠点で働いているデザイナーは、その多くが長年にわたってThinkシリーズのデザインに携わっているのも大きな特徴です。

実は、その背景にあるのがサッパー氏の存在で、私のみならず、デザインチーム全体にとってのメンターでした。だからこそ、スタッフ全員がデザインに対する共通の信念を持ち、デザインチーム全体の強い結束力につながっているのです。デザイナー同士は、長い時間をともに過ごしてきたこともあり、もはや家族みたいな間柄となっています。このため、日々のデザイン業務も阿吽の呼吸でスムーズに進められています。

─ デザインチームが20年以上にわたって受け継いできたThinkシリーズの伝統とはいったいどのようなものなのでしょうか。

Thinkシリーズの伝統を一言で説明することは非常に難しく、あえて感覚的に表現するなら、Thinkシリーズの中に宿った精神・魂のようなものといえるでしょう。今日までに登場してきた各プロダクトは、それぞれ一から作り上げたものではなく、初代のThinkPadを起点とする長い伝統の上に積み重ねられていったものです。
私たちは、全プロダクトの成功と失敗を余すことなくすべて蓄積することにより、そこで得られたノウハウや経験を含めてThinkシリーズの確固たる伝統を作り上げています。私たちのメンターだったサッパー氏は、とても残念なことに2015年12月に逝去してしまいました。しかし、サッパー氏とともに作り上げてきたThinkシリーズの伝統は、私を含めてThinkシリーズのデザインに携わるすべてのスタッフへと世代を超えて確実に受け継がれています。

─ 最後に、デザインを指揮するヒルさんの立場から見て、Thinkシリーズはどのような方にお勧めできる製品といえるでしょうか。

Thinkシリーズは、ビジネスの現場で使用される道具という視点では「本物中の本物」であると断言できます。単なる見かけ倒しで流行廃りのあるアイテムではなく、徹底的に考え抜かれたプロフェッショナルのための道具です。Thinkシリーズは、ものづくりに対して思慮深く、また本物の道具を必要としているお客様にぜひともお勧めしたい製品です。

革新×洗練がいっそう進んだNEW ThinkPad & ThinkCentre X1ファミリー

2016年2月に発表された最新モデル「ThinkPad & ThinkCentre X1ファミリー」(以下、X1ファミリー)は、ThinkPadを生んだIBMと、IBMからPC事業を引き継ぎ、その価値をさらに高め続けているレノボが、20年以上にわたって積み重ねてきた「英知」の結晶です。最新のX1ファミリーは、マシンの心臓部として第6世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーを搭載しています。
第6世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーは、最も先進的なインテルの14nm製造プロセスによって製造され、高性能化と省電力をより高い次元で両立しています。また、プロセッサーに搭載されたグラフィックス機能もさらに強化され、超高精細のグラフィックス表示などにも柔軟に対応します。これにより、第6世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーを搭載したX1ファミリーは、前世代のプロセッサーを搭載したモデルと比べて処理能力がいっそう向上しています。

次回のコラムでは、20年以上にわたって受け継いできたThinkシリーズのデザインコンセプトや、2016年2月に開催された新製品記者発表会の模様などをお届けします。

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