ソリューション
「AIをエッジで動かす」をどう実現?
求められる組み込みコンピュータの条件は
- 業種 製造
- キーワード IoT/Edge , OEMソリューション
- 製品カテゴリー PC , ワークステーション
概要
IoTやAIの登場で、製造業ではエッジコンピューティングのニーズが高まり、組み込みコンピュータの需要も拡大している。こうした中で注目されるのが、長期供給&保守をはじめ、導入の簡素化や早急な復旧を実現するOEMソリューションだ。

課題
IoTやAIの活用が広がる中、製造業を中心に製品の一部にコンピュータを組み込んで販売する“組み込み型”のソリューション展開が増加している。しかし産業機器の場合は長期利用が前提となるケースが多く、コンピュータの採用においては、長期供給や保守サポート期間などが課題となる。
ソリューション
レノボのOEMソリューションは、「ThinkStation」「ThinkEdge」「ThinkCentre」の各製品をOEMモデルとして提供。販売サイクルは3年半から最長5年、保守期間も5年間、条件によっては7年まで延長が可能。長期運用が可能なOSとして「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」もサポートしている。
導入効果
長期供給モデルは保守期間のスタート時点に柔軟性がある他、キッティング作業をPCの製造工程で実施するサービスや、OSをクラウドからリカバリーできるサービスなども提供。AIの活用が広がる中、高性能なコンピュータを組み込んだ産業製品の展開を考える企業にとって、事業展開に大きく役立つソリューションとなっている。
導入
製造業もPCやワークステーションをはじめとするコンピュータをさまざまな形で活用しているが、その方法は大まかに2つに分けられる。
一つは、業務を効率良く行うための基盤としての活用だ。CADやCAEなどのツールを用いた製品の設計開発を筆頭に、文書作成や情報共有、プレゼンテーションなど、さまざまな業務に利用されている。
もう一つは、製造業が市場に投入する製品の一部として組み込んで機能を発揮させる「組み込みコンピュータ」としての利用だ。自社製品の付加価値を高めて競合製品に対する優位性を確保するため、あるいは難易度の高い顧客の要求に応えるため、実装する機能が高度化/多様化するにつれてマイコンなどによる制御に代わってより汎用(はんよう)的なPCなどのコンピュータが用いられている。この傾向はIoT(モノのインターネット)市場の拡大によって拍車が掛かっている。
昨今では、IoTで収集したデータをAI(人工知能)で学習し、作成したモデルに製造現場で処理(推論実行)させるエッジコンピューティングのニーズも高まっている。こうした時代の追い風を受けて、組み込みコンピュータの需要はますます拡大している。
レノボのOEMソリューション事業が提供する多様な付加価値
PCやワークステーションをグローバルに展開するレノボ(Lenovo)も、OEMソリューション事業という枠組みで組み込みコンピュータのビジネスに注力している。
組み込みコンピュータというと文字通り製品内に組み込まれる「エンベデッド」をイメージするかもしれないが、レノボがOEMソリューション事業の対象としているのはそれだけではない。装置や設備を制御するPCやワークステーションをシステムに“横付け”して用いる「インテグレーテッド(統合)」、ホワイトボックスPCのように用いる「アプライアンス/リブランド」など、さまざまな形で製品を提供している。
顧客側にIP(知的財産)を含むソリューションがあり、そのソリューションをレノボ製品とセットで販売する。また単発の案件ではなく、継続したビジネスを想定しているといったケースがOEMソリューション事業の対象となる。レノボはさらに、顧客に最適な製品仕様、提供方法、サポートなども提案する。
注目すべきポイントは、レノボのOEMソリューション事業は必ずしも大量生産の製品のみを対象としていないことだ。レノボ・ジャパン OEM事業部 事業部長の川西宏和氏は「契約に際してMOQ(発注最低数量)の取り決めは必須ではなく、継続を前提とするならば極端なことを言えば1台からの発注も可能です」と語る。
同社のOEMソリューション事業は、今後大きな成長が見込まれている。起爆剤となるのはAIだ。レノボは2023年10月に米国テキサス州オースティンで開催した年次グローバル・イノベーション・イベント「Tech World」において、発表済みのAIビジョン「AI for All」を実現すべくAIイノベーションに今後3年間で10億ドルを投資することを表明した。
川西氏は「AIの活用はエッジ領域において、今後さらに進むことが見込まれています。特に製造業で高まるエッジコンピューティング需要に対応すべく、データのある場所でAIの処理を行うニーズを取り込みながら、コンピューティングパワーの力でお客さまに貢献したいと考えています」と今後のビジネスを見据えている。
レノボのOEMソリューション事業の対象となる主な産業 提供:レノボ・ジャパン
最長5年の長期供給モデルと5年間の保守サービスを用意
レノボのOEMソリューション事業はエッジ/IoTから一体型、省スペース、拡張性重視といった目的に合わせて「ThinkStation」「ThinkEdge」「ThinkCentre」の各製品をOEMモデルとして提供している。製造業向けで特に注目すべきなのは長期供給モデルだ。
レノボ・ジャパン OEMエンジニアリング本部 本部長の高橋忠志氏は「一般的なPCは1~2年の販売サイクルでモデルチェンジしますが、OEM長期供給モデルの販売サイクルは3年半から最長5年となっています。保守期間も5年間に延長され、条件によっては7年まで延長することが可能です」と語る。
5年間の販売期間を設定しているのは、インテル® 第12世代 CoreTM iプロセッサーを搭載した「ThinkStation P360 Ultra」、インテル® Xeon® W2400プロセッサーを搭載した「ThinkStation P5」、インテル® Xeon® W3400プロセッサーを搭載した「ThinkStation P7」などだ。
これらの長期供給モデルは、保守期間のスタート時点にある程度の“融通”を利かせられるのもソリューション提供者にとっては重要なポイントだ。川西氏は「レノボからお客さまに製品を納品した時点を使用開始とするのではなく、お客さまがその先の最終顧客に納品した時点を使用開始のタイミングにできるサービスが好評を得ています」と強調する。
延長保守期間に合わせた長期運用が可能なOSとして、Windows10 IoT Enterprise LTSCもサポートしている。通常版のWindowsとは異なり機能アップデートを行わず、セキュリティアップデートのみに制限した特定用途向けの組み込みOSだ。高橋氏は「レノボはマイクロソフトと個別契約し、Windows 10 IoT EnterpriseLTSCのライセンスを含めてプリインストール提供できるため、お客さま側でOSをインストールする手間もかかりません」と訴求する。
Linux系のOSを利用する場合も心配はない。「Ubuntuには既に標準対応しています。オフィシャルサポートのないOSについても米国ノースカロライナ州ラーレイのラボで随時検証しており、レノボがOSイメージの作成およびプリインストールを行って納品した実績もあります」(高橋氏)
レノボのワークステーションのラインアップ。販売期間が5年の長期供給モデルも用意している 提供:レノボ・ジャパン
きめ細かなキッティングや障害の検知&予知にも対応
レノボのOEMソリューション事業は、独自の強みを生かした3つのサービスを用意している。
1つ目の「コンフィギュレーションサービス」は、さまざまなキッティング作業をPCの製造工程で実施するサービスだ。OSイメージのプリインストールだけでなく、指定アプリケーションのインストールからストレージの暗号化、資産管理ラベルの貼り付け、BIOS設定、Microsoft Entra IDへのデバイス情報登録まで幅広い作業に対応している。「これによってPC導入におけるお客さまの作業の負荷軽減、リードタイムの短縮、コストの削減に寄与します」(高橋氏)
2つ目の「クラウドリカバリー」は、OSをクラウドからリカバリーできるサービスだ。「リカバリーメディアを使わずにファームウェア上からOSのリカバリーが可能です。何らかの原因でシステムファイルが破損してトラブルが発生した際も早急に復旧できます。レノボは定期的にクラウド上のOSイメージをアップデートしているため、リカバリー後にあらためてセキュリティアップデートを行うといった手間もありません」(高橋氏)
3つ目は「カスタムフルフィルメントサービス」だ。前述のキッティング作業を日本国内のNECパーソナルコンピュータ群馬事業場に開設されたレノボ施設内で実施するサービスだ。「国産メーカーならではの高品質の強みを生かしたキッティングを低コストで提供すると同時に、工場を使ったコンフィギュレーションサービスではカバーできないきめ細かい作業にも対応しています」(高橋氏)。同梱品の抜き取り廃棄、顧客指定物品の同梱、PC保管、WindowsUpdate、MECMタスクシーケンス実行、バックアップメディア作成、プロジェクトマネジメントといったサービスも提供している。
「お客さまとレノボはWin-Winの関係」
レノボは「売って終わりではなく、顧客のソリューションが動くまでしっかりサポートする」ことを理念としている。先述した3つのサービスをはじめとするOEMソリューション事業では、この方針がより徹底されている。
高橋氏は「レノボ製品に限らず、お客さまが独自に調達したオプションデバイスも含めてベストプラクティスを提供できるようなサービスを充実させたいと考えています」と語る。
川西氏も「お客さまのソリューションが市場で伸びれば、その分レノボがOEMモデルとして提供する製品の販売も拡大します。その意味でもお客さまとレノボはWin-Winの関係にあり、ビジネスの戦略面でも協力を惜しみません」と語り、顧客とのパートナーシップに重点を置いたビジネスをさらに強化する考えだ。
きめ細かなキッティングや障害検知にも対応
「AIをエッジで動かす」をどう実現?
求められる組み込みコンピュータの条件は




