• ホーム
  • 特集
  • 設計者が解析まで担う時代の“頼れる1台”とは?

特集

設計者が解析まで担う時代の“頼れる1台”とは?

工作機械をはじめとする産業機械の設計現場では、人材不足と納期短縮が同時に進み、設計者がCAE(Computer-Aided Engineering)やCAM(Computer-Aided Manufacturing)まで受け持つ時代になりつつある。そのためにどういったワークステーションを選択し、どのGPUを選べばよいのか。シーメンスは、「Lenovo ThinkStation P3 Tower Gen2」に、NVIDIA社のエントリー向けとハイエンドの2種類のGPUを載せ替え、CAD(Computer Aided Design)・CAM・CAEの実作業で比較検証を実施した。GPUの性能差が実務にどう影響するのか、そして業務ごとにどのGPUが適しているのか。その結果を報告する。


人材不足と納期短縮のなかで、設計者の役割が広がる

シーメンス デジタルインダストリーズ ソフトウェアは、製品の設計、性能検証、製造準備、製造実行までをデジタルでつなぐソフトウェアを提供している。

CADは「Designcenter」、CAEは「Simcenter」、CAMは「NX for Manufacturing」というように、製品名は異なるが、統合ソリューションとして扱えるのが特徴だ。

同社が近年注力するのが「デジタル・スレッド」という考え方である。設計から解析、製造まで、最初に作成したデータを1本の“デジタルの糸”でつなぎ、解析結果を設計に繰り返し反映して品質を高めたうえで、そのまま製造工程へ受け渡している。

同社 シーメンス デジタルインダストリーズ ソフトウェア ポートフォリオ開発本部 ディレクターの丸山 貴弘氏は「私の役割は、工作機械や生産機械などを含む産業機械業界に対して、我々が提供可能なソフトウェアソリューションを、包括的に紹介、提供する活動になります」と説明する。

産業機械業界の設計・解析・製造の現場では、いま大きな変化が進んでいる。ひとつは「人材不足」で、もうひとつが、「2D CADから3D CAD」への移行だ。業界には2次元図面の文化が根強く残るが、若手設計者の多くは3D CADを前提にしていることもあり、従来の2D中心のシステムを見直して3D CADへ移行する企業が増えているという。また、納期短縮も進み、特に、工作機械ではETO(受注設計生産)やCTO(受注組立生産)が当たり前になり、顧客仕様に合わせた構成変更や部品の新規設計が日常的に発生している。

「以前は、CAD、CAE、CAMをそれぞれの専任者が担う分業体制が一般的でした。しかし近年は、人手不足や業務効率化を背景に、メカ設計者がCAEやCAMのオペレーション作成まで担うケースが増えています」(丸山氏)

設計者の業務範囲が広がれば、1台のワークステーションでCADによるモデリングからCAEによる解析、CAMのオペレーション作成までをこなすことになる。CADやCAMではハードウェアのスペックによる差が出にくい一方、CAEはどこまで細かくシミュレーションするかによって、より高いスペックが求められるという。実際、同社には「3D CADの導入時に購入したワークステーションでは、スペックが足りなくなった」という相談が寄せられることも多いそうだ。

では、ワークステーションのGPUを変えると、CAD・CAE・CAMそれぞれの業務でどこまで差が生まれるのか。そして、高性能なGPUを選べば、すべての業務が快適になるのか。シーメンス デジタルインダストリーズ ソフトウェアは、Lenovoの支援のもと、実務を想定した比較検証でその答えを確かめた。


2種類のGPUで、CAD・CAE・CAMの処理性能を比較

検証に使用した
「Lenovo ThinkStation P3 Tower Gen2」

今回の検証では、比較的導入しやすいタワー型の「Lenovo ThinkStation P3 Tower Gen2」を選定した。構成はIntel Core Ultra 7 265K(Pコア8、Eコア12)、メモリ64GB。GPUは、エントリー向けの「NVIDIA RTX PRO 2000 Blackwell」(ビデオメモリ16GB)と、ハイエンドの「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Max-Q Workstation Edition」(同96GB)の2パターン(以降、RTX PRO 2000、RTX PRO 6000と表記)で、CAD・CAE・CAMの各業務について検証を行った。

CADでは、約3,000部品で約900MBの中規模アセンブリと、約8,000部品で2GB弱の大規模アセンブリを読み込み、表示や回転、拡大・縮小といった基本操作の操作感を比較した。さらに、Designcenterの「Mechatronics Concept Designer」で、NVIDIAの物理演算技術(PhysX)に最適化されたリアルタイムソルバーを使い、多数の剛体要素が落下・接触・反発するシミュレーションを実行。表示の遅延が始まるまでの時間をCPUとGPUで比べた。

  • 検証に使用した大規模アセンブリ(約8,000部品・2GB弱)のイメージ

  • 流体解析に使用した車両モデルのメッシュ(約471万セル)



CAMでは、自由曲面を多く含む自動車ヘッドランプの金型コア形状を対象に、ツールパス生成と加工シミュレーションを実施した。

CAEでは、設計空間から力の流れに沿った有機的な形状を自動生成する「トポロジー最適化」を9つのケース(下図)で実行し、CPUとGPUの処理時間を比較。また、約471万セルのメッシュで車両の空力を解く流体解析を行い、50回の反復計算にかかる時間を、CPU(Pコア8基/全20コア)とGPUで比べた。

検証結果:大規模アセンブリと解析で表れた、GPU性能の明確な差

CADの基本操作では、中規模アセンブリであればRTX PRO 2000でも操作に不満はなかったという。一方、大規模アセンブリでは、RTX PRO 2000の場合、モデルの切り替えや表示・非表示の際にもたつきが生じたが、RTX PRO 6000ではこのもたつきがほぼ解消し、実用レベルで問題なく扱えた。

Mechatronics Concept Designerで120秒間計算させた後の球体の積層状況(左:CPU、右:GPU)

この結果を受け、丸山氏は「マシンのパフォーマンスは、GPUだけでなく、マシン全体のスペックやメモリにも左右されます。特にDesigncenterでは、CPUのシングルコア性能が重視されます。また、ストレージがHDDのままでは、2GBのファイルを開くだけでも相当な時間がかかります。CPU、GPU、ストレージをバランスよく強化することが重要です」と述べている。

なお、Designcenterには大規模アセンブリを扱いやすくする「ライトウェイトモード」がある。今回は未検証だが、調整次第ではRTX PRO 2000でも大規模モデルを扱える可能性があるという。

また、NVIDIAの物理演算技術(PhysX)に対応するソルバーを持つMechatronics Concept Designerのシミュレーションでは、表示の遅延が始まるまでの時間が、CPUの約14秒に対し、RTX PRO 2000が約20秒、RTX PRO 6000が約55秒と、GPUの性能差がはっきり表れた。

トポロジー最適化のイメージ(ギアボックスの取り付け部品)

CAMでは、ツールパスの計算にGPUは使われないため、生成にかかる時間はRTX PRO 2000とRTX PRO 6000で変わらなかった。差が出たのは、生成後のツールパスの表示速度だ。特に、金型の加工プログラミングの場合、多くのオペレーションが生成されるとともに、荒加工、中仕上加工、仕上加工と、ツールパスのボリュームが徐々に大きくなるため、生成したツールパスの表示速度はオペレータの作業性に大きく寄与する。

流体解析における50回の反復計算にかかった時間の比較

「GPUの違いは計算時間に大きな差が出なくても、その後の結果のハンドリングでは2~3倍の違いがありました」(丸山氏) CAEでは、GPUの効果が明確に表れた。トポロジー最適化では、9ケースの合計処理時間で、RTX PRO 2000がCPUの約2.2倍の速さを記録。最も時間のかかったケースでは、CPUの約15分に対し、RTX PRO 2000は約8分で計算を終えた。

計算中のGPU使用率は100%に張り付いたままで、解析を回しながら資料を作るといった並行作業も難しくなる。一方、96GBのRTX PRO 6000は使用率が10数%にとどまり、2,000万~3,000万セル規模のメッシュも視野に入るという。

解析もAIも視野に入れたワークステーション選びが、設計者の業務拡大を支える

CADやCAMでは、GPUの差が表れるのは大規模データの表示など一部の場面に限られ、目的に応じた選択が求められる。一方、CAEではGPUの性能、とりわけビデオメモリの容量が、計算速度だけでなく扱える解析の規模や作業の進め方まで左右することが明らかになった。

こうした結果を踏まえ、丸山氏は「CADやCAMが中心の設計担当者にはRTX PRO 2000、本格的にCAEを行う担当者にはRTX PRO 6000と、用途に応じて使い分けるのが効果的です」と話す。

検証に使用したThinkStation P3 Tower Gen2は、静音性の面でも評価が高かった。CADやCAMの作業中はファンがほとんど回らず、高い負荷がかかる解析中も、ファンの音は静かな部類だったという。同社が社内で使うモバイルワークステーションは、重い計算をするとすぐにファンが全開になる。それと比べ、デスクトップ型ならではの静かさは、長時間作業する設計現場にとって大きな利点だ。

メンテナンス性にも優れる。ThinkStation P3 Tower Gen2は、筐体内部へ簡単にアクセスでき、GPUの抜き差しもスムーズに行えた。内部にアクセスしやすい構造のため、パーツの交換や将来的な拡張にも対応しやすい。

信頼性の面でも安心感がある。ThinkStation P3 Tower Gen2と今回のRTX PRO 2000/6000の組み合わせは、シーメンスが公開するハードウェア認証(ISV認証)リストに、推奨ドライバー(573.48 ※2026年10月1日時点)とあわせて掲載されている。Designcenter、Simcenter、NX for Manufacturingをはじめとする同社製品はいずれも認証を受けており、相性面の心配はないという。

今後は、設計者自らが解析を担うケースがさらに増えると見込まれる。近年は、AIを活用し、解析の回数を減らして結果を予測したいというニーズも高まっている。そのためには、条件を変えながら多数の解析を繰り返し、AIの学習データを蓄積しなければならない。これまで解析部門に依頼していた作業を設計部門内で完結させるうえでも、短時間で計算を終えられる環境は欠かせない。

計算環境としてはクラウドの活用も選択肢となるが、AIの活用が進むなかでは、設計データの情報漏洩リスクにも十分な配慮が求められる。その点、手元に置けるオンプレミスのワークステーションは、セキュリティ面でも安心して運用できるという。

今後のワークステーションに丸山氏が期待するのは、CPUやGPUの性能向上に加え、大容量メモリと長時間の安定動作、そしてマルチタスキングだという。

「ワークステーションは、単なるCAD端末やCAM端末ではなくなっています。計算を実行しながら仕様書などのドキュメント作成、CAEやAI、工場での画像認識、ロボットシミュレーション、バーチャルコミッショニング(仮想空間での設備の事前検証)まで、複合的に使われていきます。ハードとソフトを一緒に提供する“ワンテックカンパニー”として、お客様が『導入してよかった』と思える環境の提供を進めたいと考えています」(丸山氏)

業務の幅が広がる設計者にとって、どのGPUを選ぶかは、生産性を左右する重要な経営判断だ。用途に応じた選び分けこそが、設計現場の競争力を高める第一歩となるだろう。



シーメンス デジタルインダストリーズ ソフトウェア株式会社

所在地

〒151-8583 東京都渋谷区代々木2-2-1 小田急サザンタワー9F

URL

https://www.siemens.com/ja-jp/

概要

デジタルトランスフォーメーションを通じて産業、インフラストラクチャー、モビリティのイノベーションを推進するシーメンスの日本法人。
その事業の一つであるシーメンス デジタルインダストリーズ ソフトウェアでは、製品設計から性能検証、製造準備までをデジタルでつなぐ「Designcenter」「Simcenter」などのソフトウェアを提供している。

関連特集

法人のお客様限定

※ 販売店・特約店からのご購入を
希望の方もお使いいただけます。
保守・障害・パートナー様向け
など各種お問い合わせ窓口一覧はこちら