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特集

ThinkStation完全検証

「4K」動画撮影の後半は、ThinkPadとBlackmagicの組み合わせの良さを引き出す撮影現場をレポートする。高画質映像の撮影はカメラ、レンズ、画像処理のコンピュータが揃っているだけは不十分で、高精細映像に対応した照明や、熟知したスタッフも含めた総力戦。どんなことに注意して4K映像を創りだしていくのか、Blackmagicの高画質を引き出していくプロの現場をのぞいてみたい。

照明が高画質を引き出すために何より重要

4K動画撮影には最適な機材選定と共にテクニックが必要だ。
メーキングビデオ [6分/音声あり]

今回、カメラを固定して撮影する映像は主に最新鋭の「Blackmagic URSA」を使用した。これを使う上で注意したのが照明の「明るさ」。テスト撮影の結果や経験者からのアドバイスを総合して撮影にのぞんだ。
撮影ではカメラが記録した膨大なRAWデータを“現像”と呼ばれる処理をして、動画ファイルとして仕上げていくのだが、田村氏は今回使用するBlackMagic URSAでのRAWデータをフル活用をするためにはカメラの露出を若干明るめで撮影することがベストと判断、今回はそれに合った照明やカメラ設定を行った。
4Kのカメラはまだ発展途上。過去にSDからHD(ハイビジョン)へ移り変わる際も同様だったが、撮像素子の感度という点からも照明を明るく、光量を多くして撮影にのぞむことが必要となる。それでもただ明るくすれば良いというわけではなく、12bitあるデータのダイナミックレンジから微妙な階調を引き出すため、明るさの微調整には念を入れた。
ライトもLEDライトをベースに、従来からあるハロゲンライトを加えてやわらかな雰囲気を演出している。ロケ地となった重要文化財でもある洋館(旧前田家本邸)で、十分な光量で撮影するためには数多くのライトが必要になるのだが、その際に問題となるのは電源である。
ロケ地では室内であっても電源を借りることは難しい。特に文化財的なものになれば、安全上の問題からも電源を貸してくれることはまず期待できない。しかも撮影用のライトともなれば非常に容量が大きいため、借りることはまず無理。
今回は、発電機を持ち込んで対応したが、これでもハロゲンライトを多く使うと限界いっぱい。ケーブルの途中に測定器を挟み、容量内いっぱいのライトをスタッフが用意してくれた。

  • 持ち込んだ照明機材の光量のパフォーマンスを上げるため見切れない範囲ギリギリで照明をセッティングする

  • 古い洋館となると昼間でも室内は暗い。ライトで光量を確保しないと撮影には全く耐えられない

  • 階段と廊下も4K動画の撮影という意味では光量が全く足りていない

  • 照明の電力は撮影の命綱でもある。容量オーバーをはじめトラブルが発生しないよう、スタッフは測定器で電流を監視しながら撮影を進めている

使いやすいBlackmagic URSA

実際に撮影を進めていくと、Blackmagic URSAの使いやすさがよくわかったという。重量もあるためそれに見合った三脚と組み合わせる必要があるなど、撮影のさまざまな場面で質の高いものと組み合わせる必要があるが、それでもBlackmagic URSAは「使いやすい」とのことだ。
Blackmagic URSAは液晶画面を3面搭載しているが、カメラのファインダーに相当する液晶画面も開閉式の10インチと大きく、4Kで重要になってくるピントをしっかり合わせることや、映像をチェックする場合にもやりやすくなっている。この大画面はカメラマンにも好評で、映像チェックのほか、タッチパネルを内蔵し、各種表示や操作もこの画面から行えるようになっている。
田村氏は、「今回のBlackmagic URSAにカールツァイスのシネ用のPLマウントレンズの組み合わせは十分すぎるほどの性能を持っていた」と撮影を振り返っている。

  • Blackmagic URSAにカールツァイスのシネレンズを組み合わて撮影を行った

  • 大型の液晶画面は撮影画像の確認がしやすくたいへん好評

  • 液晶画面でもピントの確認や映っているものを細部まで確認できる

  • 画面を見ながら構図を調整中のカメラマン

使いやすいBlackmagic URSA

ロケ現場でありがたさを知る、バッテリー内蔵のThinkPad Wシリーズ

ロケ現場で電源を確保する難しさは照明のところで触れたが、さらにコンピュータを使って撮影データを扱うようになると、電源はもっと重要になってくる。照明の電源はカメラを回しているとき以外は遮断されてしまってもあまり問題ではないが、コンピュータとなれば話は別。
電源が切れることで編集中のデータが消失してしまうこともある。しかも、タイミングが悪ければ元データを含めたストレージの内容が読み込めなくなり、撮影そのものが台無しになってしまったり、あるいはコンピュータが起動しなくなってしまうこともある。
そして、今回の現場でも電源がなかったり、コンセントを差し替えたり、セットチェンジにともなってコンピュータの場所を移動しなければならないという事態が生じた。これがデスクトップPCならば、ちょっとコンセントを差し替えるためには一度シャットダウンしてやり直す必要がある。

ThinkPadならこれらの課題はすべて解決する。搭載の内蔵バッテリーのおかげで、コンセントを差し替えるくらいならば何の問題もない。USBパスパワーのメモリーカードリーダーやポータブルストレージなら、データをバックアップしながらコンセントを一時抜くこともできる。また、休憩時間を兼ねてロケ地を移動するような場合でも、バッテリー容量が間に合えば移動しながらバックアップすることも可能だ。
特にThinkPad W550sは、最新世代のNVIDIA Quadro K620グラフィックスを搭載したモバイルワークステーション。省電力設計によりバッテリーのみでも電池の持ちが良く、使い方にもよるが丸一日のロケであっても電源なしで運用することもできそうとのことだ。

  • このとき、SSDのリーダー以外はすべてThinkPadのバッテリーで動いている

  • バッテリー搭載で高いパフォーマンスを持つThinkPad W541なら現場で高画質環境でのカラーグレーディングを行え、LUT等に反映させて活用する事も可能

NVIDIA Quadro搭載ThinkPad W541ならRAWデータから動画の確認が可能

後処理を考え、生データであるRAWを基本として撮影を進めてきたが、逆に言うとカメラに記録されたデータはそのままでは全く動画として再生できない代物となる。もちろんBlackMagicのカメラはRAWデータ以外にもApple ProRes コーデックといった再生しやすい形式での記録も可能。しかし、“現像”と呼ばれる後処理で自由なカラーグレーディングを行うためにはRAWが望ましく、最近の映画やCMよく見かける大胆な色の演出を想定するならばRAWは必須だという。
そして、RAWで撮ったデータをその場でカラーグレーディングして、再生できる環境があるとなおよい。そうなった場合に必要なのが、高性能なNVIDIA Quadroグラフィックスを搭載したパワフルなモバイルワークステーション。
ThinkPad W541はNVIDIA Quadro K2100Mグラフィックスを搭載、強力なGPUの処理能力を持っている。今回使ったソフトの「Davinci Resolve」を使い、RAWデータであってもその場で再生、現像時にさまざまなLUT(Look Up Table)を割り当てることも可能だった。現場で映像チェックができるだけでなく、モデルさんにもすぐ映像を見せることができ、撮影現場の盛り上がりにも一役買っていた。

  • 撮影された素材にカラーグレーディング処理を適用し、修正などを加え意見交換を行うこともできる。

  • 現場で撮影されたムービー素材をすぐ確認できれば、カメラでの映りの詳細や演出などをクライアントやモデル共に共有できるので、その後の撮影にもプラス影響がある

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【ThinkStation完全検証】P700×4K動画 Blackmagic URSAで4Kベンチマークを撮影 後編(324KB)

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