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特集

BIMの進化が実現する建築設計の省力化

CADソフトウェアとして長い歴史を持つVectorworksは、他と比べて比較的安価に提供される3D CADとBIM(Building Information Modeling)のソフトウェアです。

BIMとして活用する際、サーバーに特別な機能が必要なく、安価に利用できるクラウドストレージや小規模サーバーにも展開でき、モデリングや作図を複数の人とコラボレーションできるようになっています。比較的小規模な設計事務所でも活用しやすいうえ、IFC形式のデータを取り込むことによって大規模設計で用いられるファイルを活用できるため、注目を集めています。

今回はVectorworksの日本国内販売元、エーアンドエー(A&A)株式会社にお話をうかがいました。

Vectorworksとは

  • CADソフトウェアとして長い歴史を持つ

  • 比較的安価に提供される3D CADソフトウェア

  • 絵を描くように自由にデザインしやすい

  • 建築以外に、インテリア、店舗設計、イベントブースやステージのデザインでも広く活用されている

BIMを使った設計が求められる事例が増えている

エーアンドエー株式会社
販売推進部
佐藤 和孝 氏

BIMとは、3D CADに加え、使っている部材の属性情報等まで含んだもののこと。現在A&Aでは、Vectorworksを使って全国各地でBIMの講習会を実施。各都道府県の建築士会などと共同で開催しています。講習会への注目は年々高まっており、開催回数は以前とそれほど変わっていないものの、すぐに定員を満たすようになってきているとのことです。

その注目を集めている理由は、BIMを使った設計に移行したいという意識が高まっていること。公共事業でもBIMの図面で出すことを求められる事例が増えてきており、その一つとして、高知県中土佐町の新庁舎と一連の建築物の例があります。BIMで設計をしないと仕事にならないという意識も広がりつつあり、3D CADへの移行を検討している人たちが増えてきているのです。

また、2016年8月には、建築確認申請がBIMのファイルで提出されたという事例ができました。これまで、多数の図面を提出する必要があった建築確認申請でも、BIMによって立体的に内容を確認するように変化が始まっています。

Courtesy of 有限会社原忠/G-House

Vectorworks Designer 2017の操作画面

小規模事務所ほどメリットがあるBIM

エーアンドエー株式会社
販売推進部
塩澤 茂之 氏

施主や行政の要件に合わせてBIMを導入せざるを得ないという面もありますが、その一方でBIMを活用することで、大幅な省力化ができることに気づき、導入を進めている人たちもいます。総合設計事務所だけでなく、むしろ小さい設計事務所こそ、BIMのメリットは得られます。

例えば、Vectorworks 2017に新搭載された展開図を同時に作成できる機能があれば、作成した3Dデータから、必要な図面をすぐに揃えることが可能になります。これまで、一つひとつ図面を作成していたことに比べると、大幅に省力化が可能。さらに、一つの3Dのデータから図面を切り出していくため、図面ごとの整合もとれています。

建築確認申請の本格的な運用はまだ先とのことですが、提出する図面が大幅に減ることによる省力化の期待は非常に大きく、確認側にとっても、BIMで提出した場合は図面の整合を確認する手間が省けることになります。さらに、確認期間の短縮なども予想され、必要に迫られていく可能性もあります。

さらに進化したVectorworks 2017

  • 排水勾配をスラブに生成する「スラブ水勾配」ツール

  • P!NTO Zero Gravity designed by Eiji Shibata TEKO Design.

    さらに進化した「サブディビジョン」により、自由な曲線も数値化して設計図面にできます。

最新となるVectorworks 2017では、設計の3D化をさらに進め、BIMとしての新機能が多数搭載されました。建築設計という点で見れば、より部材を作り込めるように機能強化されていることが特徴です。さまざまなスラブ(床版)スタイルを搭載してスラブを作成できる「スラブ」ツールのほか、「スラブ水勾配」ツールでは排水のための水勾配を設計に反映させることが可能です。たとえば屋上を設計する際、1%の勾配をきちんと図面に反映できるようになっています。

また、自由形状のサーフェスモデリングを可能にする「サブディビジョン」機能のように、より複雑な形状を数値化して設計図面化する機能の充実、設計図面から4方向の展開図を一括作成する機能を搭載しました。

サブディビジョンツールは、粘土をこねて作ったような曲面の多いデザインをきちんと図面に反映させることができます。Vectorworks 2017ではさらにこの機能を進化させ、新しい面の押出機能、開いた辺同士を接続するブリッジモードの追加などの強化を行っています。

また、3Dに関する新機能として、「Webビュー(3D)取り出し」というVR(拡張現実)プレゼンテーション機能を搭載し、「Google Cardboard」に準拠したゴーグルでVR表示ができるVRファイルを作成できるようになりました。VectorworksのWebサーバーに保存すれば、スマートフォンを「Google Cardboard」に装着するだけで場所を選ばずに3D表示がスタートします。「Google Cardboard」は公開された規格で、ビューワーが非常に手軽に作れることから普及しており、Vectorworksのイベントでも配布しています。

  • Vectorworksのイベントで配布しているビューワーと手持ちのスマートフォンがあれば、すぐにVR体験ができます。

  • VRプレゼンテーションのイメージ

展開図の機能が注目を集め、より省力化へ

Vectorworks 2017を紹介するイベントなどで、ユーザーからの反応が上々なのが「室内展開図ビューポート機能」。壁で仕切られた部屋の4面展開図を一度に作成できるという機能です。

これまで、部屋数の多い図面では、展開図の作成に手間がかかっていましたが、同時生成でき、しかも作成される図面の間には整合もとれていることによって作業効率が格段にアップします。Vectorworksは比較的規模の小さい設計事務所でも使われることが多いため、省力化につながる機能への注目が高いとのことです。

室内展開図ビューポート機能によって、4面展開図を一度に作成可能

ワークステーションのスペックが必要

エーアンドエー株式会社
商品サポート部
曽我部 雄通 氏

Vectorworks 2017を快適に活用するためのコンピュータのスペックを聞くと、曽我部氏によれば、グラフィックボード、CPU、メモリーの3つがポイントであることがあげられました。まずグラフィックボードは必須条件であり、Open/GL 2.1に対応したものが必要。Open/GLレンダリングをスムースにするためには動作が速いものを搭載したほうが良く、NVIDIA Quadro K2200以上であれば複雑な3Dモデルでも対応できるとのことです。

Vectorworks 2017はマルチコア対応なので、CPUのコア数が多いほどRenderworksレンダリング処理が高速になります。インテル® Core™ i5 プロセッサー、またはインテル® Core™ i7 プロセッサー、さらにインテル® Xeon® プロセッサーがおすすめで、コア数も4コアや8コアなど、マルチコアを推奨しています。さらに、安定性を考慮するとメモリーの量も重要で、扱うデータによっては16GB以上が望ましく、3Dモデリングをするには高いスペックのワークステーションをおすすめしています。

また、VRファイルを閲覧する際のレンダリング演算はブラウザ側で行うものの、そのためのファイルをVectorworksで書き出す処理には負荷がかかるため、ワークステーションのパフォーマンスが必要です。高解像度の緻密なVRファイルを作る場合には、パフォーマンスが高いほど短時間で作成できるとのことです。

エーアンドエー株式会社

〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2-3-15

エーアンドエー株式会社は1984年設立以来、「よいものは使おう!無いものは創ろう!」をモットーに、主に建築デザイナー向けのソフトウェア開発をてがけ、その中でも2D/3D-CAD Vectorworksは、デザイナーのためのCADとして業界標準の地歩を固めています。

URL: http://www.aanda.co.jp/