導入事例

TXP Medical株式会社

生成AI活用で医療現場の働き方改革に寄与するシステムに
Lenovoサーバーを導入
医療分野の課題解決を目指すTXP Medicalの取り組み

概要

医療現場の課題解決をミッションに掲げるTXP Medicalは、救急・急性期領域を中心に、ICTとデータを活用したソリューションを展開している。同社が提供する医療文書支援AIソリューション「NEXT Stage Document Assistant」は、退院サマリーや紹介状などの作成を自動化し、医療従事者の負担軽減と医療の質向上を実現している。同ソリューションを支えるオンプレミス基盤として、生成AIの処理性能とセキュリティ要件を満たす「Lenovo ThinkSystem SR655 V3」を採用し、医療現場でのAI活用を加速させている。


課題

医療文章作成支援AIソリューションの提供に当たり、クラウド型に加えてオンプレミス環境での提供対応を検討。セキュリティ確保や限られた予算への対応といった要件を満たしつつ、AI処理に適した高性能かつコスト効率のよいハードウェア基盤を迅速に構築することが求められていた。

ソリューション

レノボは高性能GPUサーバー「Lenovo ThinkSystem SR655V3」と最新世代のデータセンター向けGPUの組み合わせを提案。AMDEPYC?プロセッサ搭載による高スループット設計や拡張性が、同社が求める処理要件に適合した。さらに、グローバル規模の調達力を活かした短納期対応を実現し、柔軟な構成チューニングや導入後の技術支援などを提供した。

導入効果

レノボのサーバー基盤は、生成AIによる医療文書作成に求められる高い処理性能と信頼性を実現。また、GPU推論処理の安定性やハードウェアトラブルの少なさ、柔軟なサポート対応で医療機関におけるオンプレミスAI活用の定着を後押しした。今後もTXP Medicalでは、さらなる医療AIソリューション開発において、レノボ基盤の継続活用を視野に入れている。


導入

医療現場発のソリューションで変革をもたらすTXP Medical

TXP Medicalは、2017年に救急科専門医である代表取締役 園生 智弘氏が創業したスタートアップ企業である。同社は「医療データで命を救う」をミッションに掲げ、救急・急性期医療の現場を起点としたICTサービスを開発・提供している。

園生氏は「医療機関では、診療情報の記録や共有の仕組みが十分に整っておらず、オペレーションがうまく機能していないという課題が存在します。そうした現状を医師として目の当たりにし、“ 現場を変えたい”という強い思いから、リアルタイムに医療データを記録・活用できるSaaS型の診療支援システムの開発に着手しました」と説明する。

現在、TXP Medicalは救急・集中治療領域を中心に、医療現場の記録業務を効率化しながら、質の高いデータの収集・活用を可能にする医療データプラットフォームを提供している。

また、園生氏はこう続ける。「私たちの強みは、臨床のリアルな現場感とテクノロジーを両立できることです。開発メンバーの中には医師免許を持つ人材が複数おり、現場目線での改善提案やプロダクト改善を迅速に行えます」(園生氏)

たとえば、病院内外のオペレーションや、医師・看護師が直面しているドキュメント作成の負担といった、現場の“困りごと”に寄り添うことを重視しているとのことだ。

創業からわずか数年で、TXP Medicalは全国の救命救急センター・大学病院を中心とする中核病院約90の医療機関に基幹プロダクトを導入している。自治体との連携も広がり、札幌市や北九州市、山形市、新潟市、広島県などで救急医療情報システムの構築に関与している。これらの実績は同社の信頼性と実行力を裏付ける実績だといえる。

「日本人の死因の約6割が、救急・急性期医療の対象となる疾患です。そこにメスを入れることが、医療全体の生産性向上にも直結すると考えています。だからこそ、我々は現場にフィットするソリューションを開発し続けています」(園生氏)

精度と現場目線が鍵、TXP Medicalが実装する医療×生成AIの現実解

TXP Medical は、生成AIを活用した医療現場向けソリューションの社会実装を進めている。その中で注目されるのが、診療記録から退院サマリーや紹介状を自動生成する「NEXT Stage Document Assistant(NSDA)」だ。AIが要点を抽出して下書きを提示することで、医師の文書作成負担を軽減し、業務効率と文書品質の標準化を同時に実現している。

園生氏は、医療現場での文書作成業務が医師や看護師にとって大きな負担であることを指摘し、「生成AIにより一定品質の下書きが得られれば、業務負荷を大きく軽減できる」と述べる。

その一方で、医療分野では「誤りのない出力=精度」の担保が不可欠であり、TXP Medicalでは「現場で信頼して使えるAIの実装」を重視しているとのことだ。NSDAはその方針に基づいて開発されている。特に直感的なUIやプロンプト不要の操作性も重視されており、医療DXの推進において重要な役割を果たしている。

レノボ製サーバーが実現した、医療AIに最適なオンプレミス基盤

NSDAはもともとクラウド環境での提供を想定していたが、医療機関からのニーズにより、オンプレミス対応が不可欠となった。園生氏は、こうした背景について次のように語る。

「医療情報は極めてセンシティブな領域ですので『クラウドは使えない』『院内に設置したい』というご要望が圧倒的に多いのが実情です。現場にフィットする形で届けるためには、オンプレミス提供が欠かせませんでした」

この要件に応えるため、TXP Medicalはオンプレミス版NSDAの提供体制を構築。その基盤として選ばれたのが「Lenovo ThinkSystem SR655 V3」および高性能GPUだ。

Lenovo ThinkSystem SR655は、AMD EPYC?プロセッサを搭載した1ソケットサーバーで、最大4枚のデュアルスロットGPUに対応可能な高い拡張性を備えている。今回採用された高性能GPUは、AI推論や生成AI、ビジュアルコンピューティングに最適化されている。高精度な自然言語処理を必要とする用途において、その処理能力が優位性を発揮する。

AMDプロセッサは多コア・高スループットの特性を持ち、GPUとの相性にも優れており、限られた筐体内で高性能なAI処理基盤を構成できる。さらにSR655は1ソケット構成であるため、同等の処理能力を持つ2ソケットサーバーと比較してコストを抑えやすく、導入および運用における経済性にも優れている。

TXP Medicalでは、当初からこの高性能GPUの採用を決めていた。その上で当初から複数のベンダーの製品を候補に挙げ、社内で必要なスペックを細かく検証し、さまざまな観点から評価した結果、CPUとGPUの組み合わせによって性能が最適化されたレノボ製品を選んでいる。

レノボ製品を選定した理由について、同社 プラットフォーム事業本部 NEXT Stage 事業部 医師 の高峰 航氏は次のように語る。

「このGPUは自然言語処理系のタスクにも非常に相性が良く、医療文書生成の推論処理を安定して高速にこなしてくれます。また、AMD EPYC?との組み合わせにより、メモリ帯域も確保でき、全体としてのスループットの高さも期待できました」(同氏)

また高峰氏は、重要な選定理由として全体のコストを抑えられることも挙げる。「公的補助金や限られた予算の中で、GPU性能とコストのバランスに優れる点が魅力でした」

このようにAMD搭載モデルであるSR655は、必要な性能を満たしつつも、価格帯を抑えられる点が高く評価され、AI活用の普及を支える基盤として採用された。

短納期・高信頼の体制で医療現場を支援、レノボの総合力が現場定着を後押し

導入プロジェクトは、全国の医療機関からの要望を受けて急ピッチで展開され、2024年中頃から具体的な受注・構成検討を経て、同年秋頃には初期納品・稼働に至っている。

一般的に医療機関のシステム導入では補助金制度を活用する場合が多く、機器調達から設置・稼働までのスケジュールは厳しく制約されることがある。通常であれば数カ月を要する工程に対して、レノボは必要なGPU構成の確定から製品出荷、現地設置までを約1カ月という短期間で完了した。

同社が今回のプロジェクトにおいて、期限内に確実かつスピーディに対応したことで、オンプレミス環境におけるスムーズなシステム実装を後押しした点も高く評価された。

「見積もりを含めて実際の納品までをわずか約2カ月で対応してもらえたのは、私たちにとって非常にありがたいものでした。スピード感と確実性を兼ね備えた対応は、今回の事例には欠かせなかった要素だと感じています」(高峰氏)

単なるサーバー性能だけでなく、グローバル規模での供給体制を有していることから「必要な性能を、必要なタイミングで提供できる」機動力を備えている点は、レノボならではの強みといえるだろう。

また、レノボ製サーバーの運用においては、GPU推論処理の安定性やハードウェアトラブルの少なさ、そして初期導入後のサポート対応にも高い評価が寄せられている。「構成チューニングやトラブル時の問い合わせ対応など、非常に丁寧かつ柔軟に対応してもらっています。単なるサーバーベンダーというより、信頼できる技術パートナーという印象です」と高峰氏は述べた。

NSDAのオンプレミス版は現在、800床規模の大病院を中心に導入が進んでいるという。

同氏は「取引のある多くの医療機関では、これまでオンプレミス環境に慣れているという背景があり、今回院内環境に導入できたことは現場にとっても安心感があったようです。さらに最新のAI技術が病院内で稼働している点も高く評価されました」という導入医療機関の担当者の声を紹介した。

導入後に一度メモリの不具合が発生したことがあったが、レノボは即座に部品交換を実施した。対応のスピードと確実さは医療現場でも高く評価されている。

高峰氏は「高性能サーバーでは、トラブル時の対応力が重要となります。その点においてレノボは信頼できるパートナーです。今後も安心して運用できると確信しています」と力を込める。

医療の現場課題にテクノロジーで挑む─TXP Medicalが描く次の展開と レノボとの協業強化

TXP Medicalでは、NSDAについて紹介状や診療情報提供書、看護サマリーなど医療文書全般への応用拡大を視野に入れており、開発チームは現場のニーズを取り込みながら機能強化を続けている。

園生氏は「NSDAを通じて医師や看護師の負担を軽減し、医療現場のドキュメントワークを“よりよい医療の土台”として再定義していきたい」と語る。その中で注目すべきは、医療データの多様性と、病院ごとの文書管理文化への適応である。園生氏は「現場ごとに異なる運用や書式に柔軟に対応できるAIを設計し、現実の業務に適合するプロダクトに育てていくことが鍵になる」と語る。

こうした事業拡張においても、ハードウェア基盤の信頼性と拡張性は極めて重要な要素である。現在、TXP Medicalでは、NSDA以外にも救急支援システムや災害医療支援ソリューションにおいて、AIを用いたデータ解析・推論を組み込む新規開発を進めているこれらのプロダクトでも、GPUサーバーのオンプレミス活用が求められる場面があり、今後もレノボ製サーバーを積極的に検討していく意向である。

高峰氏は「医療はクラウド化が遅れている領域も多く、病院や自治体の中でAIを実装するには、オンプレミス対応とセキュリティ、そして調達のしやすさが求められます。その点で、経営支援やOCR連携などの展開を視野に入れて、LenovoのSR655 V3は実績ある基盤として今後も活用していきたいです」と述べる。

また、「実際にハードウェアを院内に導入できたことで、今後はGPUを活用した他の医療系サービスの提案や展開も進めやすくなったと感じています」と語り、NSDAを医療現場の働き方を根本から変える「ゲームチェンジャー」という存在に発展させていきたいという想いを語ってくれた。

その上で、TXP Medicalは単なる製品供給にとどまらず、現場に即した導入支援やPoC環境の柔軟な提供といったレノボの支援体制のさらなる強化にも期待を寄せている。特に医療・自治体向けのAI導入が増加していく中で、パートナーとしてのレノボの提案力と対応力の進化は、今後の協業深化における鍵となる。

園生氏は「救急医療×データという社会課題から一歩踏み出して、生成AI×医療という領域におけるトップランナーとしてのブランディングを確立していきたいと考えています。その中で、レノボとの協力は非常に重要なファクターになると感じています」と語る。

「一医師として始めた事業ではありますが、将来的には電子カルテや医療情報システムにAIが当たり前のように組み込まれた世界を、1日も早く実現したいと思っています」(園生氏)

TXP Medicalでは、自社の社会貢献の拡大に向けて、今後もレノボとの協業を強化していく構えである。

この課題を解決した製品・ソリューション

  • ThinkSystem SR655 V3

    最新の第5世代AMD EPYCTM プロセッサを搭載。 AI・HPCから仮想化まで幅広いワークロードを高効率にサポート

お客様プロフィール

お客様

TXP Medical株式会社

所在地

東京都千代田区神田東松下町41-1 HO 神田706

設立

2017年8月

代表者

代表取締役 園生 智弘 氏(救急科専門医)

事業内容

病院・自治体向けの医療システム開発・提供、 製薬企業・研究機関向けの医療データ利活用支援、 急性期・救急医療に特化したAI・ICTソリューションの提供


TXP Medical株式会社

生成AI活用で医療現場の働き方改革に寄与するシステムにLenovoサーバーを導入
医療分野の課題解決を目指すTXP Medicalの取り組み

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