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導入事例

キリン株式会社

レノボ製PCをベースとする「ThinBoot ZERO」をグループ全体で採用。約14,000台に及ぶユーザPCを一気にシンクライアント化。

導入について

グループ全体でシンクライアントへと移行したことにより、いつでもどこでも快適に業務をこなせる真のモバイルワークスタイルの基盤を確立しました。

キリンビジネスシステム株式会社
情報技術統轄部 インフラ技術管理グループ 部長
門田 晴裕 氏

PCの持ち出しに制約があった従来のクライアント環境

キリングループは、社員の業務を支える重要なツールとしてレノボ製品の前身となる日本IBM製のノートPC(ThinkPad)を数多く導入してきました。しかし、平均して5年以上、部門によっては10年近く使われ続けてきた結果、PCの老朽化が大きな課題として浮上していました。

このように老朽化が大きく進んだノートPCは、バッテリパックが過度に消耗し、ACアダプタがなければ使えないほどの状態でした。また、古いソフトウェア環境を起因として、社外お客様とのファイルのやりとりの際にバージョン違いによる互換性で困る機会が増えており、差し迫っていたMicrosoft® Windows® XPとMicrosoft® Office 2003のサポート終了期限も緊急の課題となっていました。

さらに、従来のクライアント環境では、PC内にユーザデータが保管されていたため、PCの盗難や紛失による重要情報の紛失が懸念されていました。キリングループでは、『飲酒する場合はPCの持ち出しをしてはならない』というルールが定められており、このルールは、アルコールを販売する会社の社員が、アルコールが原因で事件・事故を起こしてはならないという考えに基づくものでした。しかし、お客様先である料飲店などを訪問する営業は、アルコールを飲む機会が多く、外出においてPCを持ち出さなくなり、それが結果的に社員の機動力を損なう原因にもなっていました。

キリンのIT関連業務を全面的に担っているキリンビジネスシステム株式会社 情報技術統轄部 インフラ技術管理グループ部長の門田晴裕氏は、当時の様子を「せっかくノートPCを配布していながら、その優れた機動性を活かせていなかったのです」と振り返っています。

端末としてThinkPad XシリーズベースのThinBoot ZEROを採用

キリングループは、中期経営計画(2013~2015年度)の一環として、クライアント環境のセキュリティ強化と利便性向上の両立につながるシンクライアントへの移行を決断しました。

同グループは、シンクライアントシステムの実現方法をいくつか比較・検討した結果、Citrix Systemsのクライアント仮想化ソリューションを選択しています。ここでは、ユーザ毎のデスクトップ環境を提供するデスクトップ仮想化ソリューション「Citrix XenDesktop」と、特定の業務アプリケーションを対象としたアプリケーション仮想化ソリューション「Citrix XenApp」を組み合わせています。

キリンビジネスシステム 情報技術統轄部 インフラ技術管理グループリーダーの金岡鐘一氏は、アプリケーション仮想化技術を採用した背景について「当グループには、400個以上の業務アプリケーションがあり、その一部はPC上で動作するタイプのものでした。PCを更新するにあたり、新しいOS環境にあわせた業務アプリケーションの改修が必要になりますが、それには膨大な時間とコストがかかります。そこで注目したのが、アプリケーション仮想化技術でした。アプリケーション仮想化を導入すれば、アプリケーションの動作がクライアント側のOS環境に影響を受けなくなり、アプリケーションの改修作業も最小限に抑えられます」と説明しています。

仮想デスクトップ基盤を支えるサーバ群には、今後レノボ製品として移管される日本IBM製のx86サーバ(IBM System xシリーズ)が採用されましたが、ユーザPCも同じくレノボ製品をベースとするエス・アンド・アイ株式会社のシンクライアント専用機「ThinBoot ZERO」を組み合わせています。同グループでは、処理性能、 液晶ディスプレイのサイズ、携帯性、周辺機器の接続性などを総合的に判断し、ThinkPad Xシリーズをベースとする携帯性重視のモデル(B5 NOTE type)を選択しています。

門田氏は、「当グループでは、候補となったいくつかのメーカ、モデルをユーザ部門にも見てもらい、その声も参考にして最終的なモデルを選んでいます。液晶プロジェクターを接続するためのVGAポートや社内ネットワークに接続するLANポートといった従来から利用している外部インターフェース要件も必須であり、コストと要件の両方を満たす製品として最終的にThinkPadベースのThinBoot ZEROが採用されました」と述べています。

社員の負担軽減に注力しながら約14,000台のPCを一斉に導入

キリンは、2013年から仮想デスクトップ基盤の構築、業務アプリケーションの改修、そしてユーザPCの配布をスケジュール通りに進めてきました。

内勤部門の中でも特に大画面のディスプレイや高い処理能力を必要とする業務では、これまで通りにデスクトップPCを残していますが、それ以外の業務ではすべてシンクライアントへと移行しています。

2014年4月の中野本社内勤部門を皮切りに、同年9月の営業部門に至る6ヶ月間でシンクライアント化を完了しています。シンクライアントシステムに関わるユーザPCは、グループ全体で約14,000台に及びますが、そのうち約3,000台はこれまで使用してきたノートPCをThinBoot ZEROの仕様に変更してそのまま利用しています。

これに対し、金岡氏は「ThinBoot ZEROでは、既存のThinkPadやThinkCentreシリーズも、OSやソフトウェアモジュールを入れ替えるだけですぐにシンクライアント専用機に早変わりします。社内には使用年数がそれほど経過していないPCもあり、今回は資産の保護という観点からこれらのPCをThinBoot ZEROとして使い続けることにしました」と語ります。

同グループは、各社員のユーザデータを仮想デスクトップ環境へと移行するために、専用のデータ移行ツールを用意しています。しかし、国内に200以上もある拠点では、WAN回線を介してデータをコピーすると時間がかかりすぎます。そこで、拠点ごとにネットワークストレージ(NAS)を配備し、2週間の期間をかけて拠点内でのデータ移行作業が行われました。
その後、NASをデータセンターまで物理的に搬送し、ユーザデータを仮想デスクトップ基盤へと反映しています。

門田氏は、「シンクライアントの導入に際して、社員の負担軽減や混乱の回避に注力しました。例えば、新環境への移行作業や使い方に関する相談窓口を設けたり、ワンタッチでユーザデータを移行できる専用ツールを開発したのも、そのような取り組みのひとつといえます。さらに、シンクライアントに移行してから1ヶ月間は、従来のノートPCとシンクライアントを併用できるようにして、業務への影響を最小限に抑えながらシンクライアントに慣れてもらえるように配慮しました」と述べています。

当社が採用したThinBoot ZEROは、従来のノートPCよりも軽量でバッテリ駆動時間も大きく伸び、社員の機動力アップに貢献しています。

キリンビジネスシステム株式会社
情報技術統轄部 インフラ技術管理グループ リーダー
金岡 鐘一 氏

管理の自動化や迅速な障害対応などユーザ視点で大きな導入効果を達成

キリンでは、シンクライアントの導入とあわ せて各拠点のWAN回線を増速しています。こ れにより、本社のみならず、支店・営業所内の 保証されたネットワーク環境下では、従来の PCと同等以上の快適さでシンクライアントを 活用できています。

また、社員のPCをThinBoot ZEROに切り替えたことで、これまでのPCが抱えていた数々の問題も解決されました。新しいPCはバッテリの持続時間が非常に長く、多くの社員が8時間以上の連続稼働を達成しています。このため、夜間にバッテリを充電しておけば、朝から夕方まで就業時間中にはACアダプタがなくても使い続けられるようになりました。

さらに、ソリッドステートドライブ(SSD)の搭載によって、システムの起動速度も飛躍的に向上しています。従来のPCでは、電源投入からログイン画面が表示されるまでに6分以上かかっていましたが、ThinBoot ZEROでは約1分にまで短縮されています。

シンクライアントシステムでは、仮想デスクトップ基盤の中に全PCのOSイメージとユーザデータが収容されます。このため、従来ならば就業時間中に社員自身の手で行われていたデータバックアップ、セキュリティパッチの適用などを就業時間外の夜間や休日に自動化できています。そして、これらの作業をシステム側の仕組みで強制的に実行することにより、クライアント環境のセキュリティレベルも大きく向上しています。

さらには、PCにユーザ毎のソフトウェア環境が含まれないことから、ハードウェアが故障した際には新たなPCをユーザに配布するだけで障害対応が完了します。従来は、ソフトウェアの再セットアップが必要になり、復旧には少なくとも半日以上かかっていました。

門田氏は、ユーザから見たシンクライアントの導入効果を「仮想デスクトップ基盤の導入とその運用コストはかかりますが、シンクライアントを実際に利用するユーザの視点に立てば十分にコストメリットが得られていると感じています。例えば、PCの起動が高速化されたり、データバックアップやソフトウェア更新が完全に自動化されたりすることで、ユーザが本来の業務に振り向けられる時間が確実に増えています。ユーザ1人1人のレベルで見れば小さな改善かもしれませんが、グループ全体で考えれば非常に大きな効果として積み上がります」と説明しています。

常に端末を携帯できる体制を整えモバイルワークスタイルを確立

キリンでは、営業部門の社員をはじめとして、とりわけ外出する機会が多い社員に、PCだけでなくLTE/3G回線対応のモバイルルータも一緒に配布しています(約6,000台)。これにより、外出先にいても社内とまったく同一のデスクトップ環境で快適に業務をこなせています。

特に外出先での快適なシンクライアント利用を追求する場合、モバイル通信環境の強化が不可欠です。同グループの営業社員は、全国のいたる場所で業務を遂行する必要があることから、より広い通信エリアで安定した通信速度が得られるように、これからもモバイル通信環境の改善を進めていく計画です。

また、シンクライアント化によってPCの紛失や盗難に伴うデータ紛失のリスクを排除できたことを受け、酒席を伴う外出時にもPCの持ち出しを許可するように運用ルールが変更されています。

金岡氏は、「当グループでは、酒席の有無にかかわらず常にPCを携帯できるようにルールを変更し、社員が肌身離さずPCを持参できるような体制を整えました。この結果、いつでもどこでも業務をこなせるモバイルワークスタイルが定着し、業務の効率をさらに高めていけると確信しています」と述べています。

キリンでは、グループ全体でシンクライアントシステムを導入したことにより、将来的なソフトウェア更新やPCの入れ替え作業も大幅に簡素化されます。門田氏は、今後の展望を「今回導入したB5 NOTE typeのThinBoot ZEROは、通常のノートPC(ThinkPad Xシリーズ)をシンクライアントとして活用したものになります。今後は、シンクライアントに特化して設計されたモデルが登場すると嬉しく思っています。液晶ディスプレイのサイズがもっと大きく、そしてもっと薄くて軽いシンクライアント専用設計のモデルが登場すれば、社員の機動力を一段と高められるはずです」と述べ、同社の要望に応えてくれるレノボ製品の登場に大きな期待を寄せています。

2014年11月取材

この課題を解決した製品・ソリューション

  • ThinBoot ZERO

    信頼のレノボ製品をベースに開発されたシンクライアント専用機。ノート、タブレット、デスクトップ型など、製品ラインナップも豊富。

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