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導入事例

久喜市教育委員会

STEAM教育を軸にICT活用を加速。全国初「GIGAスクール端末代替機運用サービス」導入で学びを止めない取組

導入について

埼玉県東北部に位置する久喜市は、人口約15万人の自治体。市内には小学校が21校、中学校が10校あり、約1万500人の児童生徒が学んでいます。同市ではGIGAスクール構想をきっかけにSTEAM教育に力を入れ、全小・中学校で探究学習を強化。ICT活用も広がり、1人1台端末が文房具として生かされています。 一方で、ICT活用が進むにつれて浮き彫りになってきた課題が、不具合や故障による端末の修理対応です。久喜市はこの課題解決に、レノボ・ジャパンの「保守用代替機運用サービス」を導入。修理にかかる日数を大幅に短縮し、いち早く児童生徒の元へ端末を届ける仕組みを実現しました。



STEAM教育を充実させる体制と学習環境を整備し、学びを変える意識づくりへ

久喜市教育委員会 指導課付GIGAスクール推進室 指導主事 古田裕子氏

久喜市では、「だれもが夢と志をもち みんなで豊かな人生を切り拓く 久喜の教育 ~no one left behind(誰一人取り残さない)~」を教育理念に掲げ、さまざまな教育改革を進めています。なかでも注目したいのは、GIGAスクール構想を機に力を入れているSTEAM教育です。

同市教育委員会 指導課付GIGAスクール推進室 指導主事 古田裕子氏は、「これからの学びは、インプットとアウトプットを繰り返しながら学ぶ探究学習がメインになり、教科学習と総合的な学習の時間、それぞれが両輪となって学びが往還していくものになると考えています」と述べており、STEAM教育を充実させる学習環境の整備に取り組んでいます。


具体的に久喜市では授業時数特例校(※)の制度を利用し、市内の1校を除く、30校で「総合的な学習の時間」と「生活科」の時数を増強し、探究的な学び・STEAM教育の時間を充実させるという、全国的にもめずらしい取り組みを実践しています。また、STEAM教育研究委員会を組織化して、各小・中学校にSTEAM教育を推進する教員を配置したほか、STEAM教育の実践やリソースをまとめたウェブサイト「STEAM教育Platform」も作成して情報発信も強化。さらには企業と連携して市内2校にハイスペックPCや3Dプリンター、動画編集ソフトや3D-CADソフトなどをそろえた「STEAMLab」も整備し、STEAM教育を積極的に進めてきました。

砂原小学校(左)と久喜中学校(右)にSTEAMLabを整備

※授業時数特例校

義務教育段階において、学年ごとに定められた各教科等の授業時数について、総枠としての授業時数(各学年の年間の標準授業時数の総授業時数)は 維持した上で、1割を上限として各教科(※1)の標準授業時数を下回った教育課程の編成を特例的に認める制度。 下回ったことによって生じた授業時数を別の教科等の授業時数に上乗せすることで、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成(※2)や探究的な学習活動の充実に資する教育課程編成の一層の推進を図る。

※1 音楽(中学校第2,3学年)、美術(中学校第2,3学年)、技術・家庭、特別の教科 道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動を除く。
※2 学習の基盤となる資質・能力(言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等)の育成や、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成(伝統文化教育、主権者教育、消費者教育、法教育、知的財産教育、郷土・地域教育、海洋教育、環境教育、放射線教育、生命の尊重に関する教育、健康教育、食育、安全教育の充実など)が考えられる。

古田氏は、このようなSTEAM教育の実践について、1人1台端末の活用を進めるうえでも重要だと話しています。「“端末が導入されたから使ってください”では学校のICT活用は進みません。やはり、管理職や現場の教員に対して、これからどのような教育をめざすのか、学校が求められている教育は何かを伝え、学びを変えていく必要があることを理解してもらうことが大切です。久喜市ではSTEAM教育を通して、教科横断的な学びの実現や情報活用能力、未来を拓く力の育成など、久喜市がめざす教育について伝えてきました。地道な働きかけですが、これが1人1台端末の活用推進にもつながったと思います」 (古田氏)。

探究学習とICTの活用で主体的な学びへ、学力向上の効果も見え始める

久喜市の小・中学校では、どのようなSTEAM教育が実践されているのでしょうか。

砂原小学校の総合的な学習の時間では、「大規模災害に備える」をテーマに探究学習を実施。学校が避難所になったことを想定し、冬の寒い廊下で1時間過ごす体験をしました。その際、児童は体温と気温を定期観測し、Google スプレッドシートに入力。理科で学習した空気の層があると温かくなるという知識をもとに、新聞紙をなど身近なものから簡易的な寝袋を作成し、データを見比べながら有効な暖の取り方を探究しました。

古田氏は端末を使って学ぶ児童生徒の姿に、「探究学習では、児童生徒は協働的に学ぶようになるのでICTを必然的に使います。知りたい情報にアクセスしたり、まとめの資料を協働で作成したり、オンラインを活用できることも学びを進めるうえで大きな強みになっています」とICT活用と探究学習の親和性を語っています。久喜市の小・中学校では、児童生徒が自ら北海道や沖縄の学校とコンタクトを取り、リモート授業を提案することもあるといいます。遠く離れた同級生と学び合う、貴重な経験も生み出しています。

古田氏は探究学習について、まだ確証できる段階ではないと前置きをしつつも、「協働的な学びや探究学習に力を入れている学校では、学力調査で良い結果が出るようになり、相関も見られるようになってきました」と手応えを語っています。特に、記述式問題の正答率が伸びたほか、無回答率が減少し、自分の考えを表現できるようになってきたというのです。

「探究学習にICTを活用することで、児童生徒が欲しい情報を自ら獲得し、自分の考えも表現しやすくなりました。結果として、友達との話し合いが増え、意見を分類したり、分析したりと思考する場面が増えていることが学力向上につながっているのではないかと思います」と古田氏は語っています。

久喜市ではさらにSTEAM教育を進化させるべく、2023年度からすべての学年の、すべての単元で探究型の授業への組み替えを実施。単元一覧表に落とし込み、日々の授業改善も進めています。


故障した端末を早く児童生徒へ届けたい、レノボの「保守用代替機運用サービス」を導入

久喜市教育委員会 指導課 GIGAスクール推進室 主任 原島辰徳氏

探究学習や日々の授業で積極的にICTを活用する久喜市。端末の持ち帰りも多くの学校で毎日のように実施されており、GIGAスクール構想で整備した約1万台のChromebookは文房具として稼働しています。

一方で、ICT活用の取り組みが進むにつれて課題になってきたのが、端末の故障や不具合による修理対応です。この課題は久喜市に限らず、どの自治体でも発生していますが、毎日頻繁に端末を活用する久喜市では、この課題を深刻に捉えていたようです。

同教育委員会 指導課 GIGAスクール推進室 主任 原島辰徳氏は「端末を修理する大変さ以上に、不具合や故障によって児童生徒の学びが止まってしまうことが大きな懸念でした。なんとかして端末を早く子どもたちの元へ届けることはできないか、修理に代わる手段を探していました」と語っています。


そこで、久喜市では、2022年に補正予算でレノボ・ジャパンの「保守用代替機運用サービス」を導入。同サービスは、通常の保守サービスを追加購入する代わりに、障害対応時の予備機台数を予め設定し、必要に応じて故障端末を新品の端末(代替機)と交換できるというもの。通常よりも短期間で端末を児童生徒の元に返せるメリットがあります。久喜市は同サービスを使って4年間で1,200台の代替機を設定。原島氏は「代替機運用サービスを導入するまでは、入札を実施して多数の端末を修繕する場合、故障した端末を直して、子どもたちの元へ届けるまでに2ヶ月程度かかっていました。今では、電話一本で子どもたちの元に最短3営業日で代替機を届けることができます。このスピード感は、代替機運用サービスならではのメリットです。」と話しています。

また、年度末の進級対応にも故障端末に課題があったと原島氏。3月に入ってから卒業生の端末に不具合が多く発生していたことが分かり、同じ端末を新1年生に渡すには支障が出ていたというのです。

「たとえば、液晶が大きくひび割れした場合は、子どもたちもすぐに先生へ報告するのですが、軽微な液晶破損は文字が読めて、タッチパネルも操作できるからと我慢してそのまま3月末まで使用しているケースが散見されました。破損した端末が年度末にまとまって返却され、そのまま新入生へ配布することに抵抗がありました。修繕したくても年度末で予算も時間もない中で、代替機運用サービスが窮地を救ってくれました。軽微な破損も含めると、故障した端末は600台もありましたが、全て代替機と交換し、新入生に新しい端末を配布することができました。」(原島氏)。このように、保守用代替機運用サービスを活用することで、多忙な時期の修理の対応も軽減し、新入生の端末も台数を確保することができたというのです。

一方で、同サービスの利用にあたっては、“故障しても新品の端末がすぐに届く”というメリットについて、端末を雑に扱って壊しても新品にすぐ取り替えてくれるという誤った理解が広がらないように注意を払い、学校や児童生徒には愛着を持って端末を使ってほしいと指導しているといいます。また、端末が故障や破損した際には、どのような状況で破損等が生じたのか、再発防止に必要な対策は何か、家庭での振り返りや再発防止を考える機会として報告書の作成を求めている。さらには、家庭内で端末が破損・故障した場合は、保護者にも修理代を負担してもらうよう周知しているといいます。端末を文房具として使っていくうえで、皆が大切に使うという意識を高めていくことも大切です。

セカンドGIGAへ向けて

このようにGIGAスクール構想以降、STEAM教育に軸を置き、ICT活用を積極的に進めてきた久喜市。ゆえに端末の修理対応など、使っているからこその課題にも直面していますが、保守・サポート体制を年々充実させながら学習環境を進化させています。今後はセカンドGIGAに向けて、さらなるICTの活用推進や学びのアップデートが求められていますが、古田氏は児童生徒自ら判断し、教室という空間の中に個別学習や協働学習など様々な学習形態が広がっている「学びの複線化」に力をいれていきたいと話しています。そして子ども達自身が自己の学びを調整しながら学ぶ「自立した学習者」の育成を目指しています。

「今後は教室という空間の中で、児童生徒一人ひとりの思いや学習スタイルに応じた複線化された学びが当たり前になる日が来るでしょう。児童生徒が端末を活用して学びを自走させていく、そんな教育をめざして今後も取り組みを進めていきたいと思います」と展望を語ってくれました。久喜市がめざす教育に、これからの学習環境を考える未来があるといえます。


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