導入事例
株式会社サムライピクチャーズ
概要
劇場版アニメ「新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-」の冒頭を飾る、美しくも妖艶な吉原桃源郷の街並みを高速カメラワークで描いた圧巻の映像――そのCG制作をサムライピクチャーズが担いました。新たなレンダリング環境を見据えた実証用として「ThinkStation P3 Tower」を活用。高水準のアウトプットが要求されるプロジェクトで、卓越したクリエイティブワークの生産性と品質をさらに高めました。

課題
劇場版アニメ作品の大規模CG制作において、旧世代CPUを搭載した現行のレンダリング環境では性能が不足しており、1フレーム当たりのレンダリング時間が見通せず、納期遅延リスクが高まっていた。
ソリューション
「ThinkStation P3 Tower」を5台調達し、既存のレンダーファームと並行稼働で実証。高速化に加え、負荷の高い処理でもダウンを避ける安定性・信頼性、障害時の手厚いサポートを重視した制作基盤として活用した。
導入効果
レンダリング時間を約20分/フレームから約5分へ短縮し、少ない台数でも3~4倍の高速化を実現。書き出し時間の短縮分を確認サイクルの頻度アップに当てることでミスの早期発見と手戻り削減が可能となり、品質向上を後押し。さらに、42GB級の大規模なBG(背景)モデルも安定処理でき、制作期間中の予定外ダウンタイムはゼロに。
導入
監督・演出陣との綿密な連携で高品質CGを実現するサムライピクチャーズの制作アプローチ
2026年2月13日、「新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-」が公開されました。本作のオープニングを飾るのは、地下深くに広がる地下遊郭都市・吉原桃源郷の映像です。闇の中で赤く脈打つように輝く街をカメラが高速で駆け抜け、立体的に組まれた楼閣や提灯の光が妖しく揺らめき、吉原の美しさと狂気が、まさに劇場版ならではのスケールで迫ってきます。
このCG制作を全面的に担当したのが、サムライピクチャーズです。特に上述した吉原桃源郷のシーンは同作品の“顔”となる重要カットであるため、3Dモデル制作からアニメーション、コンポジット処理まで、実に1年近い期間を要し、制作チームは公開ギリギリまで調整を続けてきました。

物語の舞台となる地下遊郭都市・吉原桃源郷
そんな同社のこだわりは、アニメ制作会社から提供される設定資料を忠実に3Dモデルとして再現し、動かし、作品の世界観を損なわない高い品質を追求し続ける点にあります。同社の代表取締役/CGディレクターの谷口 顕也氏は、「CG制作にあたり特に重視しているのが、監督や演出陣とのコミュニケーションです。吉原桃源郷のような街並みを丸ごと精細に作り込むとデータが膨大になり、レンダリングコストが跳ね上がるため、『どのアングルがよく映り込むか』を綿密に議論しながら、制作リソースを優先箇所へ集中させるアプローチを取っています」と説明します。
さらに同社が強みとするのはBG(背景)制作だけではありません。アクションシーンでは3D空間の複雑なカメラワークを「CGガイド」として先行制作し、作画チームに引き継ぐ手法を採用しました。建物のパースやキャラクターの等身の違和感を防ぎつつ、作画チームの負担を減らす効果的なCG活用に、同社のノウハウが活かされています。
旧世代レンダーファームが迎えた性能限界と納期リスクへの危機感
同社にとって不可欠なのが、コンピューティングのパワーです。現在、インテルXeonプロセッサーを搭載した8台のサーバーをネットワーク接続し、フレームごとにコンポジット処理を分散させるレンダリング環境を構築・運用しています。しかし、今回の「新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-」における大規模なCG制作にあたり、現場からは懸念の声が上がりました。
「現行サーバーに搭載されたインテルXeonプロセッサーはすでに旧世代となっていることもあり、パフォーマンス不足は否めません。1フレームあたりどれくらいレンダリング時間がかかるのか見通しが立たなかったのです。納期遅れという最悪の事態を避けるためにも、より高速なマシンを使わせてほしいという要望が殺到しました」(谷口氏)
そこで同社はネットワークレンダリング環境の刷新を見据えた実証を兼ねて、「ThinkStation P3 Tower」5台の活用に踏み切りました。
5台すべてがインテルCore i7-13700Kプロセッサーに64GBのDDR5メモリ、さらにGPUにはNVIDIA GeForce RTX 4080を搭載したハイエンドモデルで、絶大なパフォーマンス増強をもたらします。

ThinkStation P3 Towerを連結してレンダーファームとして活用
もっとも、単にパフォーマンスを補うだけなら高性能化した最近のゲーミングPCも選択肢に入るのも事実です。しかし、あえてワークステーションに着目したことには、別の理由がありました。
「アニメ作品のCG制作では、『安定性』と『信頼性』がきわめて重要な要件となるのです。仮にコンポジット工程などの負荷の重い処理中にマシンがダウンすると、多大な手戻りとコストが発生してしまいます。マシンにトラブルや故障が起こった際のリスク低減の観点からも、手厚い『サポート』を備えたワークステーションが望ましいと言えます。また、当社では3Dモデル制作の工程で『Autodesk 3ds Max』と『Blender』、コンポジット作業の工程で『After Effects』、テクスチャ作成の工程で『Photoshop』や『Substance Painter』といったツールを使っていますが、これらのソフトウェアの運用面でも豊富な実績を持つThinkStation P3 Towerは大きな安心感がありました」(谷口氏)
レンダリング高速化でトライ&エラーを加速させ品質と生産性を底上げ
現行のサーバー群と並行稼働させた比較検証の結果として、ThinkStation P3 Towerは次のような多くの改善をもたらしました。
まずは、レンダリング処理の劇的な時間短縮です。コンポジット工程を担当するCGディレクターの佐藤 七海氏は、「これまで1フレームあたり約20分を要していたレンダリング処理が、ThinkStation P3 Tower上では、わずか5分程度で完了するようになりました。レンダーファームを構成するマシン台数は8台から5台に減少したにもかかわらず、単純計算で3~4倍のスピードアップが実現したことに驚きました」と話します。
このスピードアップは単に作業効率化だけでなく、CG制作におけるクオリティ向上にも直結します。アニメーション制作を統括するCGサブディレクターの栗林 新氏は、「同じ時間内でより多くの確認サイクルを回せるようになりました。これまでは時間的な制約から確認を省略してコンポジット工程に渡した結果、レンダリング時にミスが発覚しても修正が間に合わず、素材を納品したあとから自主リテイクを行うケースもありました。ThinkStation P3 Towerによってトライ&エラーがやりやすくなった現在は、より早い段階でミスに気付けるようになり、無駄な手戻りを防いでいます」と評価します。
さらにThinkStation P3 Towerは、モデリング工程にも大きな恩恵をもたらしました。CG制作の工程をプリプロダクションからメインプロダクションに進めるためには、監督からの承認を得たうえで、できるだけ早くアセットを確定しなければなりません。そこで造形を詳細に検討する際に、ビューポート上でモデルを360度回転させて全体像を確認するのですが、マシンに十分な処理能力が備わっていない場合、多大なレスポンス遅延が発生してしまいます。

繰り返し調整作業が入るため、マシンパワーの高さが作業効率に直結する
モデル制作およびアセット管理を担当するモデルディレクターの望月 一輝氏は、「ThinkStation P3 Towerは大規模なBGや大人数のモブキャラクター(不特定多数の人物)も滑らかに動かしたり、回転させたりすることが可能で、確認作業の効率を高めています」と話します。
そして特筆すべきが、大容量データへの対応です。今回3Dで制作した吉原桃源郷の街並みは、テクスチャ込みで総容量約42GBに達します。この大規模なBGモデルを、ThinkStation P3 Towerは難なくレンダリングできたのです。「一部のカットでは解像度を倍にしてレンダリングしたのち、縮小して使用するというさらなる高品質化のための工夫も凝らしましたが、それでも運用上の支障はまったくありませんでした。この規模のBGモデルならば、ThinkStation P3 Towerはレンダリングサーバーとして問題なく対応できることを実証できました」(谷口氏)
制作期間全体を通して、ハードウェアに起因するトラブルも皆無で、予定外のダウンタイムも発生していないと言います。 「5台のThinkStation P3 Towerはラック搭載してサーバールームで運用したのですが、発熱も気にならず、安心して活用できました」(谷口氏)
ThinkStation P3 Towerが示した可能性本格刷新で目指すさらなる制作環境の進化
劇場版アニメのCG制作という、非常に要求水準の高いプロジェクトを通じてThinkStation P3 Towerを活用してきた実績と成果を踏まえ、同社は現行のレンダリング環境の刷新に向けた本格的な検討に入っています。
当然、そうした中で新たなプラットフォームの最有力候補となっているのは、レノボのワークステーションに他なりません。
「私たちにとってThinkStation P3 Towerは、単に『速い』だけでなく、『安定性』と『信頼性』、そして『手厚いサポート』を兼ね揃えた最適なマシンです。今回の制作を通して、クリエイターたちのトライ&エラーを支えつつ、CG制作のクオリティを底上げするパートナーとして機能することが実証されました」(谷口氏)
そのうえで同社が次に注目しているのが、レノボのコンパクトなワークステーションラインアップです。
同社オフィスのサーバールームは電源容量やスペース、床耐荷重などファシリティ面の制約から、設置台数がどうしても限られてしまいます。そこで現在、省スペース設計の「ThinkStation P3 Ultra」や「ThinkStation P3 Tiny」といったコンパクトモデルも視野に入れており、適材適所での活用を検討しているといいます。
「仮にマシンを10台しか設置できなかった場所に20台設置し、安定的な運用ができるとなれば、クリエイターたちのストレスを軽減する、より快適な制作環境を提供することが可能となります」(谷口氏)
このように同社では今回のP3 Towerで実証した信頼性をベースに、コンパクトモデルとの適材適所の組み合わせによって、制作環境のさらなる最適化を図る考えです。
業界で名を馳せた同社は、アニメ作品だけでなくTVCMやゲーム、遊技機などといった多様なジャンルのCGムービー制作でビジネスを拡大しており、将来的には3DCGだけでなく、アニメ制作会社(元請け)としてオリジナルアニメ作品の全面制作にもチャレンジしたいという構想を持っています。
そんな夢の実現を支えるプラットフォームとして、レノボのワークステーションにはますます大きな期待が寄せられています。
お客様プロフィール
お客様 |
株式会社サムライピクチャーズ |
|---|---|
所在地 |
東京都北区西ヶ原1-46-13 横河駒込ビル3階 |
設立 |
2009年 6月 |
株式会社サムライピクチャーズ
劇場版アニメの大規模CG制作が物語る ThinkStation P3 Towerの レンダリング高速化と安定稼働の実証




