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特集

ThinkStation完全検証

最新3D CADソフトでは次々と64ビットOSへの対応化が進んでいる。
その中でも店舗設計をはじめとするインテリアデザインや舞台設計の分野に人気の一方、3D CADを初めて習う教育現場でも多くの支持を得ているVectorworksが最新版でWindows 64ビットOSへの対応を果たし、よりパフォーマンスをアップさせた。今回は最新版となるVectorworks 2015の能力を十分に引き出すことのできるThinkStationのスペックについて、日本国内の販売元、エーアンドエー(A&A)株式会社 マーケティング本部 ソリューション商品販促部 次長の福原弘之氏にお話を伺った。

Vectorworksとは?

まず、最初にVectorworksについて説明しておくと登場は28年前のアメリカで、日本にはその数年後、1989年から導入されているソフトウェアだ。当時はMiniCADという名前だったが、のちにVectorworksと名前が変わり、現在まで続いている。
現在は、意匠、店舗、インテリア、舞台デザイン、プロダクトデザインなどの幅広い設計分野に多く使われ、舞台デザインの分野では、照明計画や、舞台の装飾デザインなどにも利用されている。また、昨今では、Vectorworksが得意とする3Dモデリングの機能を活かし、3Dプリンタなどとの連携によるものづくりにも注目されている。
一方で大学や専門学校の授業で使われることも多く、ある調査ではCADの講義を本格的に行っている学校で最も多く使われているソフトとしている。CADの入門者が触れることの多いソフトということでもあり、Vectorworksの潜在的利用者はかなり多い。

Vectorworks 2015と今回製品を解説していただいたA&Aの福原氏

Vectorworks 2015と今回製品を解説していただいたA&Aの福原氏

Vectorworksは海外でつくられ日本でローカライズを行い販売されているソフトウェアではあるが、日本の建築市場向けには、利便性に優れた専用プラグインソフトをエーアンドエー社が開発している。その代表的なものには、産学共同の研究開発による熱環境や、群衆の行動などをシミュレーションできるものや、日本の建築設計支援を目的とした日影計算が行えるプラグインがある。
こういった機能を持っているVectorworksだが、2014年のバージョンから大きく変わったことがある。これまではプロセッサー内蔵グラフィックチップなどでも動作していたが、2014年版からはQuadro等のグラフィックボードが必須となったこと。現在はグラフィックボードなしでの動作は推奨していないという。そして、いよいよVectorworks 2015では、64ビット化を完成させている。

Vectorworks 2015では64ビット化、大きなデータを円滑に展開

Vectorwarks 2015の特徴について説明するA&Aの福原氏

Vectorwarks 2015の特徴について説明するA&Aの福原氏

新バージョンが出るたびに進化を進めていったVectorworksだが、今回登場した“2015”ではいよいよ64ビット化を実現した。A&Aの福原氏はこれまで32ビットOSで制約を受けていたメモリーの使用環境について向上されたことが特徴と指摘しており、「日々、設計分野でのデザインは進化しており、より独創性豊かなデザインが求められています。そのデザイナーのみなさんにとって、作業性の向上や、効率化につながる機能拡張については大変喜ばれるものと思います。」と話された。
全体の安定性や、作業性の向上なども上げられるが、64ビット化の恩恵を最も受けたのは3Dレンダリングで、ソフトウェアが利用できるメモリー(RAM)が大きくなったことで、大きく複雑なデータを安定してレンダリングできるようになったという。
代表的なものとしては、複雑な建物内部を歩き回るような視点で展開する「ウォークスルー」という機能があるが、これまではメモリーオーバーフローを起こして止まってしまうような複雑なデータも取り扱いができるようになった。

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ウォークスルーで再現可能な建物内部。
タスクマネージャーで使用しているメモリー量を参考までに表示しているが、ウォークスルーを開始すると使用率が増えている。4GBを超えて利用できるのも64ビット版ならでは。

また設計対象の内部を輪切りにして、建物なら配管の位置関係まで理解しやすくなる「クリップキューブ」という機能も従来からあったものだが、複雑に作り込みすぎると表示が追いつかなくなる問題が、グラフィックボードの処理能力アップと64ビット化でメモリーに展開できる領域が広がったことで解消された。

カットした断面を表示するクリップキューブ機能がスムースに利用できるのも、グラフィックボードと大容量メモリーを扱える64ビット版の恩恵だ

カットした断面を表示するクリップキューブ機能がスムースに利用できるのも、グラフィックボードと大容量メモリーを扱える64ビット版の恩恵だ

そればかりではない。メモリーに展開できるデータが多くなり処理に余裕ができたためブラッシュアップされた機能も多い。たとえばアングル切り替え時にアニメーション表示が可能になった。アングルが切り替わる瞬間、従来はパっと一瞬で切り替わるため、どのアングルからどのアングルへ変化したのかがわかりにくく、その際に視点を失うこともあった。ところが新バージョンではアングルの切り替えの途中経過がアニメーションでわかるようになり、切り替えた場合にどのアングルなのか直感的にわかりやすくなった。
このほか全体的なことだが、大容量メモリーを駆使できるようになったため、全体的なパフォーマンスに余裕が生まれている。グラフィックボードに処理を任せない演算処理についても高速化が図られている。

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