株式会社電報児
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4K動画編集の後編は、DaVinci ResolveとThinkStation P700による実際の編集作業の様子や問題点、ハードウェアに求められる機能をまとめてみたい。スペックは高ければ高いほどよいが、4K動画編集に求められるスペックの勘所はどこなのか、そして、Blackmagicのカメラやカールツァイスのレンズといった最新の4K対応プロ用機材で撮影した素材との関連についてもまとめた。
4Kという、今までのHDと比べ4倍の情報が詰まった動画を編集するとなると、求められるのはワークステーションのパフォーマンスだ。Blackmagicのカメラやカールツァイスのレンズで撮影した高画質素材を活かすも殺すも後処理で、高画質の映像データを、きちんと仕上げていくために必要なものがたくさんある。
特にワークステーションのパフォーマンスは重要で、撮影した素材を100%活かすためには全く加工していない生の画像データから仕上げていくことが不可欠となる。後処理を重視したカメラからは連番ファイルという1コマ1コマが別々のファイルで出力され、毎秒30フレームで撮影すれば、1秒間に30個のファイルが書き出される方法を採用する。それが長時間になれば、どれだけ膨大なファイル量が生成される想像できるだろう。
そして、その連番ファイルを動画として再生するためにも高い処理能力が必要となる。1コマ1コマはRAW形式の生データの状態。映像として表示するためには1コマごとに計算処理が必要で、しかもカラーグレーディングを行っていれば、さらに1コマずつ補正処理も必要となる。4Kともなれば3840×2160ピクセルの高解像度画像、しかも1コマが4.26MBもあるデータをひとつひとつ静止画として生成し、さらに画像処理をして、それが1秒間に30回連続的に行われる。PCで画像修正の経験があれば、これがどれだけ重い処理なのかも想像できるだろう。
つまり、連番ファイルを滑らかにプレビューするということは、高性能ワークステーションの性能をフルに使ってもできるかできないかというほど非常に重い処理。そこで、4Kの連番ファイルの編集には、“カクカク”したコマ送り動画から、滑らかな映像を想像して補正操作を行っていくという職人技が必要だったのだ。
ところが、“カクカク”した映像から想像して仕上げていく職人技は、ハイスペックで構成したThinkStation P700には必要なくなるかもしれない。実際に再生を試してみると、毎秒30フレームのうち12フレームほどだが見た目にも“動画”として再生がなされている。全フレームが完全に再生できているわけではないが、動いている映像を見ながら編集するにはあまり問題にならないレベルだという。
田村氏は、今まで、4Kの連番ファイル再生では、コマ送り的で音も途切れ途切れな再生になってしまうことは通常だったとしている。それが、今回試したThinkStation P700+NVIDIA Quadro K5200の組み合わせのように、フルフレーム再生できてしまうことは、「すごいこと」だと評している。
実際には同じ連番ファイルでも撮影したカメラの種類や映像などでグラフィックボードの負荷具合や再生のスムースさに変化がある。組み合わせによってはグラフィックボードの負荷が連続して90%超えに張り付くものもある。
しかし、今回撮影したような高い解像度を持つカールツァイスのレンズと最新のBlackMagic URSAの組み合わせで撮影した動画は、決して軽い処理ではない。一昔前のワークステーションではスムースな再生が不可能なのは間違いない。
なお、今回の動画編集に備えて、試し撮りした6144×3160ピクセルの6K解像度の動画再生も行ってみたが、Raw形式のムービーファイルをリアルタイムで再生が可能だった。これについてはNVIDIA Quadro K5200とNVIDIA Quadro K4200で試し、その性能差を表している。
今回、編集作業をしての田村氏の感想は、連番ファイルの再生ができることなどに触れ、「4K動画編集のワークフローをまともに動かせるマシンに対して、すごく驚きを感じた。世代が一つ変わったという印象がある」ということだ。
4Kカメラが普及し、4K動画をしっかり仕上げていくことが要求される時代がやってくるため、このように一連の作業をきちんとこなせる性能は必須とのこと。「初期のインテル® Core™ i7 プロセッサーを搭載するワークステーションにQuadro 4000や5000を組み合わせているものは、買い替えの時期なのかもしれない」と語っている。
最新のThinkStation P700とNVIDIA Quadro K5200の組み合わせを試してみたが、連番ファイルが動画として再生できるなど、パフォーマンス的に4K動画編集の新たな基準となるようなものになった。
もちろん、それだけでは美しい超高解像度映像を作り出すことはできない。カラーの編集には正確な色表示能力を持ったEIZOの4Kモニター「ColorEdge CG248-4K」のようなモニターが不可欠。色再現が正確だからこそ、さまざまな色のアレンジにも挑戦することができる。また、画像のアレンジをするためには元のデータが緻密で情報量が多いことも必要で、Blackmagicのカメラとカールツァイスのレンズを使うことで、精密な色味も再現でき、後から編集できる幅も広がってくる。
それでも、動画の編集は動画としてプレビューするほどのパフォーマンスを持ったワークステーションがあることは第一条件となろう。残念ながら4K動画編集をスムースに行うスペックのThinkStation P700は気軽に投資できる価格ではないが、本格的な4K動画の制作に挑むならば、ぜひスペックにも注目してワークステーション選びをしてほしい。
4K編集に必要なスペック |
6K以上を狙うハイスペック |
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モデル |
ThinkStation P700 |
ThinkStation P900 |
プロセッサー |
Xeon E5-2600 v3 |
Xeon E5-2600 v3 |
メモリー |
48GB~96GB |
64GB~128GB |
ストレージ(OS,アプリ) ※1 |
256GB M.2 SSD×2 or 256GB/512GB SSD RAID0 |
256GB M.2 SSD×4 or 256GB/512GB SSD RAID0 |
グラフィックス |
※1 データ用、バックアップ用ストレージには、必要容量に応じてSSDまたはHDDの搭載が必要です。
※2 Quadro M6000は、2015年7月以降にP700/P900でのサポート開始となります。
【ThinkStation完全検証】Quadro K5200とDaVinci Resolveで4K動画編集に挑む 後編(270KB)