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新たな展開を見せるBIMが品質向上と効率化を推進

CADソフトとして長い歴史と豊富な導入実績のあるAutodesk AutoCAD。そのAutodeskが開発する建築向けの3D CADソフトウェアがAutodesk Revitです。多くの大手設計事務所でも採用され、大規模案件の設計にも使われている定番のBIMソフトのひとつとなっています。今回はBIMの現状をオートデスク株式会社の技術営業本部 建設ソリューション BIM スペシャリスト 三井真則氏にうかがいました。

Autodesk Revitとは

  • AutoCADを手がけるAutodeskのソフトウェア

  • スーパーゼネコンや大規模設計事務所でも導入が進んでいる

  • BIMデータで建築確認申請など、最先端の試みを実施

BIMデータ提出が必須要件の案件が増えてきている

Autodesk Revitの操作画面

まず最近の状況として、BIMデータ提出が必須要件の案件が増えてきていることが挙げられます。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関連する案件では、BIMを盛り込んだデータの要求が増えてきています。また、大都市における大規模な案件だけでなく、2016年に高知県中土佐町が、BIMを利用した公募型プロポーザルを行うなど、地方でも突然としてBIMデータ提出が必須要件の案件が登場することもあります。

現在、建築士会ではBIMのセミナーを行っており、全国の都道府県は回っているものの、地方でのニーズはまだ少なく、施主からBIMデータ提出を指定されるような案件はほとんどありません。しかし、BIMで設計をすると、施主に提案する際に3Dでイメージを見せられるなど、相手にわかりやすく説明することができるようになります。

さらに、設計と同時に部材数量の把握がしやすく、正確な予算管理が可能になるというメリットもあります。そういった点から、小規模事務所でもBIMを使ったことで“仕事がとれる”という話が出ると、「そんなにメリットがあるならやってみよう」となるケースも少なくないそうです。

実際にBIMの活用を始めた設計事務所からは、もう2次元には戻れないという声も聞きます。昔から設計者は、頭の中では空間として3Dでイメージを持ち、それを紙の図面に起こしてきたということを考えると、イメージをそのままに3Dで設計することは、2Dに置き換える工程を省くことができ、効率化につながるのです。

図面の整合作業がなく、修正作業が大幅に楽になる

オートデスク株式会社
技術営業本部 建設ソリューション BIM スペシャリスト
三井 真則 氏

設計者のイメージどおりに3Dで描けることのほか、3Dで設計すると平面図と立面図の整合性がとれるという点もメリットとして挙げられます。

実際の設計のうち、時間がかかってしまうところは修正作業です。従来はCADで修正したあと、各部分の整合をとり、よく確認する必要がありました。ところがBIMは、3次元モデルを作成し、そこから必要に応じて平面図や立面図を切り出すため、平面図や立面図の整合性を確認するプロセスを省くことができます。

また、整合が取れることで、必要な図面作成にかかる時間も圧倒的に短縮されます。3Dでモデルをきちんと作成しておけば、修正があった場合、関係するところも修正されるために、直し忘れによる図面の手戻りが少なくなり、整合がとれた状態の図面をすぐに用意できます。大規模な案件において、関係する平面図を1枚1枚丹念に直すことに比べれば、BIMによって得られる効率化の差はさらに大きくなります。

建築確認でもBIMデータを活用し効率化

BIMによる建築設計では、新しい動きもあります。建物を建てる際に不可欠な建築確認において、Autodesk RevitのBIMデータを基にした建築確認事例が登場しました※。

通常、審査は複数の図面を確認して行われますが、BIMデータをもとにすれば、図面間における整合の確認が不要になるなど簡略化につながります。また、直接BIMデータで提出することができれば、申請側も複数の図面を出力して揃えるという準備の負担が減ります。

これは、2016年8月に初めての事例が登場したばかりですが、今後はさらに広がっていく可能性を秘めています。審査時の手間が減るだけでなく、審査の品質向上や審査期間の短縮、さらに審査コストの低減まで含めて、さらなる展開が期待されます。

※プレスリリース : BIM データを使用した建築確認申請手続きによる国内初の確認済証を交付

進化したAutodesk Revitの特徴

Autodesk Revitは、BIM用に開発されたソフトウェアで、アイデアを設計に活かし、実際の施工まで結びつけます。意匠設計からはじまり、機械、電気、配管、構造エンジニアリングまでを一貫して行なうことができます。

広く普及しているCADソフトのAutodesk AutoCADと同じAutodeskの製品であるため、メニューなどの操作インターフェースが似ています。そのため、AutoCADから3DやBIMに移行する際、他社のソフトへ移行するよりはハードルが低くなっています。

基本機能のなかには、ワークシェアリング機能のほか、ネットワーク経由でコラボレーションする機能といった大規模な設計に必要な機能が含まれています。

最新版に搭載された「デプス キューイング」機能では、立面図と断面図の奥行きに対して濃淡を付けることで、図面の表現力が増し、奥行きを画面上で確認することが容易になっています。また、手すりを配置する機能を改善しています。壁の上部、フロア、屋根などの勾配、曲率、高さにもとづいて手すりをホストし、実際の取り付け方を確認して手すりをモデリングすることができます。

  • 「デプス キューイング」機能によって、画面上ではわかりにくいこともある奥行きが濃淡で表現され、より理解しやすくなった

  • 手すりの配置の設計が実際の取り付け方を確認しながらできる

また、3Dスキャナで取得した点群データから、Autodesk Revitのデータを生成し、実際の図面にするといったことも可能です。山口県下関市にある田中絹代ぶんか館(旧下関電信局電話課庁舎)は3Dスキャナで点群データを作成し、Autodesk Revitのデータに落とし込みました。この田中絹代ぶんか館では、Webサイトで3DのPDFデータを公開しており、誰でも3Dで建物の様子を確認できるようになっています。

田中絹代ぶんか館

Autodesk Revitで評価の高い機能がいくつかあります。そのひとつは、図面で直したものがすぐに3Dに反映できることです。例えば、打ち合わせをしながら修正があった場合、すぐにその場で平面図を修正すれば、リアルタイムで3D表示も変化します。反対に3D表示を直していくと、同時に平面図の情報が変わっていきます。

平面図で修正したあとに3D表示に切り替えれば変更されたものが表示できるというのは、BIMソフトウェアの大きな特徴です。図面を読み取ってイメージするということはスキルのある専門家ならたやすいことかもしれませんが、3Dで表示してイメージを示せば、より多くの人に理解してもらいやすくなります。それを実現するのが、最新のAutodesk Revitです。

Autodesk Revitを活用するスペックは?

最後にAutodesk Revitを利用するためのコンピューターの選び方をご紹介します。まず注意することは、NVIDIA Quadroなど高性能グラフィックボードを搭載していることが条件で、オンボード内蔵グラフィックスのみの機種は推奨していません。

モバイルワークステーションはさらに便利です。ワークステーション用のグラフィックスを搭載していれば、モバイルでもデスクトップに遜色ないパフォーマンスが得られ、クライアントと打ち合わせをしながらその場で修正することも可能です。従来ならば、打ち合わせの場で出た事項は、事務所に戻って修正し、次回打ち合わせ時に新たな図面等を持参するという流れでした。しかし、モバイルワークステーションを使うことで、客先で修正、確認を行い、そのまま先に進めることができるようになります。もちろん、全体の整合性が取れるというBIMのメリットも活かすことができます。

ただし、モバイルの利用では注意することがあります。ワークステーション用グラフィックスを搭載しているモバイルワークステーションはさまざまなメーカーの製品がありますが、グラフィックスの自動切り替えを無効にでき、内蔵グラフィックスを完全に動作させない設定がある機種を強く勧めているとのことです。グラフィックスの自動切り替えは主に省電力のためですが、ソフトウェアが意図しない切り替えが行われると、問題が発生することがあります。ThinkPad P50/P70のように、BIOS設定でグラフィックスの自動切り替えをオフにできるモバイルワークステーションは、内蔵グラフィックスを完全に切り離せるため、安定して動作させることができ、おすすめです。

BIOS画面におけるグラフィックス設定の詳細はこちら

オートデスク株式会社

〒104-6024 東京都中央区晴海 1-8-10
晴海アイランド トリトンスクエアオフィスタワーX 24階

1982年にAutoCADを発売して以来、さまざまな3Dソフトウェアを提供。3D技術を使ったデザイン・設計、エンジニアリング、エンターテインメント向けソフトウェアのリーディング企業となっています。オートデスクのソフトウェアは製造、建築、土木インフラ、CG/映像などの分野で利用され、コンピューターでデザイン・設計、可視化、シミュレーションに活用されています。

URL: http://www.autodesk.co.jp/

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