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【セミナーレポート Vol.1】GIGAスクール構想実現のリーダー群像とは?

【セミナーレポート Vol.1】GIGAスクール構想実現のリーダー群像とは?
― 新しい「学び」の様式を描くための実践知とリーダーの資質 ―

2020年7月から9月に開催されたLenovoマンスリーセミナー第1クールでは、臨時休校という前代未聞の危機に際して、教育長、学校長、教員のそれぞれの立場にあるリーダーに、子供たちの「学び」を止めないために取り組んだ具体を語ってもらった。

この具体にこそ全国の学校現場が求めるGIGAスクール構想実現に向けた実践知があり、同時に新しい時代を拓くリーダーに求められる資質を見出すことができる。

2020年7月からの毎月1回、教育現場の最前線で奮闘されている3人のリーダーに登壇いただき、オンラインセミナーを開催してきた。

7月から9月の第1クールは、東京都小金井市教育委員会教育長 大熊 雅士氏、東京学芸大学附属小金井小学校教諭 鈴木 秀樹氏、福岡県福岡市立吉塚小学校校長 太田 康治氏の3名とともに熱い議論を交わし、大変貴重なお話を頂戴した。本編ではその内容をかいつまんでレポートする。

  • 東京都小金井市教育委員会教育長
    大熊 雅士氏

  • 福岡県福岡市立吉塚小学校校長
    太田 康治氏

  • 東京学芸大学附属小金井小学校教諭
    鈴木 秀樹氏

的確な現状認識とスピード感ある対応

2月末の全国一斉の臨時休校の要請は、緊急事態宣言の発令によって年度をまたぎ、東京では6月になってようやく学校が再開された。このような状況の中、国は前年の12月に決定したGIGAスクール構想の目標達成年度を一気に5年前倒しする補正予算を成立させた。

これによって令和2年度中に全国の小・中学生に一人一台の情報端末の配備と各学校の高速通信ネットワークの整備がなされることになった。GIGAスクール構想の実現によるICT環境の整備は、コロナ禍による緊急事態には有効だと解っても、現実の配備には相当の時間がかかる。


東京都小金井市教育委員会教育長
大熊 雅士氏

はたして多くの学校現場が暗中模索にある中、確かな現状・時代認識をもつリーダーたちが全国で動き出した。本セミナーに登壇したお三方も教育長、学校長、教員とそれぞれの立場にあってリーダーシップを遺憾なく発揮するが、そのスピード感には目を見張るものがあった。

東京都小金井市教育委員会大熊雅士教育長は、国補正予算を確実に執行するために6月の市議会で7億円4千万円もの補正予算を承認させている。

全国を見渡した時、このスピード感で議会対応を行なった教育委員会はどれくらいあったのだろう。この甲斐あって、小金井市は11月末までに全小・中学校に端末の配備と高速通信ネットワークの整備を終えている。多くの自治体が今年度末に端末の配備が完了する状況にある中、異例の速さである。


福岡市立吉塚小学校も、年度はじめには教科書も配布できない状況にありながら、太田康治校長のリーダーシップで現状のICT環境を最大限に活用する取り組みを始めた。

2020年5月には全校でのオンライン授業を開始:福岡市立吉塚小学校


福岡県福岡市立吉塚小学校校長
太田 康治氏

各家庭のICT環境調査を行い、5/3の日曜日にはWEB会議システムを活用したオンラインによる教育活動を行なった。この時期オンライン授業の配信等がSNS上でバズっていたが、学校長のリーダーシップのもと保護者をも巻き込んで全校体制でオンライン授業をスタートさせた学校は、全国でどのくらいあったのだろう。


また東京学芸大学附属小金井小学校でも、3月に鈴木秀樹教諭の学級で試行してきたオンライン授業の経験を生かして、4月からはWEB会議システムを活用して全校で授業の課題配信を始めた。子供の学びを「再起動」させることを合言葉に、ICT活用による授業実践の推進をリーダーが同僚に訴え続けた。

東京学芸大学附属小金井小学校の教育ICT運用サイクル


東京学芸大学附属小金井小学校教諭
鈴木 秀樹氏

「わからなければ聞き合い」「やりたいことができなければアイディアを出しあう」「活用はスモールステップ」「運用はトライアル&エラーで」 リーダーの真摯な思いが、同僚を動かしていった。


見えたICT活用の本質

不十分なICT環境にあっても、前代未聞の危機を何とか乗り越えようと一歩踏み出すことで、新しい「学び」の可能性とその具体が見えてきた。

吉塚小学校の太田校長からは、授業観の転換の必要性が提案された。「自律性、非同期性、個別最適化」をキーワードに新しい「学び」としての授業を構想することに加えて、「インストラクション、コーチング、ファシリテーション、コーディネーション」が教員の新しい役割であることを明言された。

教員の新しい役割を提言「Society5.0型学級経営」:福岡市立吉塚小学校校長 校長


また東京学芸大学附属小金井小学校の鈴木教諭は、オンラインの「同期」「非同期」の観点から、単元レベルにおける新しい「学び」の授業提案がなされた。

附属小金井小の4・5月のオンライン授業は非同期型の実践だったと振り返る。教員は時間差で多くの子供に個別に関われた非同期型の授業メリットを実感したという。

この経験が7月になると、非同期型と同期型とを組み合わせた単元レベルの授業実践へと発展する。その成果を実感した鈴木教諭は、GIGAにおける教師の授業力は「同期型と非同期型を組み合わせた授業構想力だ」と提言する。

非同期型と同期型とを組み合わせた単元レベルの授業実践へ:東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木教諭

小金井市教育委員会の大熊教育長は、ICT活用はその成果を出すには「死の谷」を超えなければならないことを指摘した。大熊教育長によれば、ICT活用による授業実践は、その当初は期待するほどの成果をあげることは難しく、従来授業よりも学習効果が下がると言う。ICTを活用した授業実践でそれなりの成果を上げるのは、ICT導入の真の理解と相応のリテラシが求められることは言うまでもない。

「死の谷」を超えるまでは期待した学習効果を得ることが難しい:小金井市教育委員会 大熊教育長

「死の谷」を乗り越えるためには橋をかけなければならないが、そこに校長のリーダーシップが発揮されるべきで、そのため小金井市ではオンライン校長会の開催や導入した学習支援システムを使って学校経営の状況を「共有」することで、まずはリーダーがその効果を実感する取り組みを始めたことを紹介した。

リーダーがICTの効果を「共有」し合うことによって、さらに:小金井市教育委員会 大熊教育長

リーダーの資質と魅力

現状を航海に例えれば、これまでは穏やかな海原にあって航海を続け、規定通りに航行すれば目的地にちゃんとたどり着くことができた。ところが一変、コロナ禍という大しけ、全国1800もの船団が、今大嵐に見舞われ、怒涛の中にある。

躊躇わず、一歩前に打って出て自らが状況を全身で感じること。このスピード感ある行動力がリーダーに求められている。リーダーの自覚と覚悟がその先を照らすレーダーとなっていることを実感できたマンスリーセミナー(第1クール)であった。


Writing by

合同会社MAZDA Incredible Lab
松田 孝

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